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99年9月18日 日本テレビ「報道特捜プロジェクト」

まずこの問題からスタートです。

報道特捜プロジェクトでは、今年5月と7月、幼児虐待の問題を取り上げた。
その反響は大きく、600通(画面には648通)を越えるファックスが、番組に次々と寄せられた。

過去5年間、親の虐待で死亡した児童の数は、400名を超える。月におよそ7人の割合で、罪のない小さな命が消えていく。

子どもを虐待地獄から救う手だてはないのだろうか。

虐待を受けている児童が発見された場合は、最寄りの児童相談所が一時的に児童を保護、その後、家庭で暮らすのが困難と判断された場合、児童養護施設に預けられる。
こうした施設は、全国に555ヶ所あり、2歳から18歳までの子ども達が暮らしている。東京都の場合、児童養護施設にいるおよそ半数が、家庭内で虐待を受けた子ども達である。施設に入ることにより、子ども達は虐待される地獄の日々から逃れ、安全な環境の中で暮らすことが出来る。
 が、しかし・・・

 神奈川県にある児童養護施設で衝撃の事実が発覚した。その衝撃の事実とは・・・。
緊急報告! 養護施設の児童虐待

 私たちは、神奈川県鎌倉市の養護施設内で、子ども達が虐待されているという情報を聞き、向かった。児童養護施設 鎌倉保育園。
神奈川県から委託された社会福祉法人が運営している。創設者の親族により、代々受け継がれてきた施設である。4代目には理事長が園長を兼ね、さらにその息子が副園長を務めてきた。

 この親子が5年前に施設の運営を任されて依頼、施設内で子ども達への虐待が繰り返されてきたという。

 児童養護施設という密室で、一体何が行われているのか。虐待の事実を探るべく、私たちは施設の様子を知る関係者を捜し歩いた。園長一族への恐怖心などから、どの関係者も一応に口は重く、事実を知るのに困難を要した。
 ようやく出会った一人の人物から、施設内の驚くべき実態を聞いた。

(鎌倉保育園の関係者)
「あそこでは、やっぱり、半端ではない厳しさと体罰があったということですね。とにかく幼児の頃からメチャクチャに叩かれたんですよ。あれは、やっぱりね、異常だったですよ。布団たたきってあるじゃないですか。あれでねー、青あざが出来るほど殴られるですよ。それも一度や二度じゃなくて、日常生活の中で言うことを聞かなかった時に、そうやられた。」

 関係者に依れば、子ども達への躾と称した虐待は、日常茶飯事だったという。しかも、暴力は、園長の息子の副園長と、その息のかかった保育士たちの手で行われ、園長はそれを知りつつ、黙認してきたという。関係者の口から次々と虐待の事実が飛び出した。

 ある児童は、食事をもどしてしまったところ、それを無理矢理食べさせられたという。
園長の息子たちは、一体どんなつもりで虐待をしてきたのか。そらに関係者に聞いた。

(鎌倉保育園の関係者)
「一個の人間として、対等の関係にあるという、人間の尊厳に関わる事項、それについては、そう思ってないということですね。持ち物検査も、日常的にやっていたんですね。」

 園長たちは、子ども達の手紙や日記を、すべてチェック。口答えをした子ども達は、「幸の家」と名付けられた部屋に集められ、およそ10ヶ月にも渡り、テレビ、音楽、電話などを禁止された生活を送らされたという。

 こうした一連の虐待は本当なのか。その真相を探るべく、鎌倉保育園に幾度となく足を運び、取材を試みた。しかし、園長とその息子は、一度たりとも私たちの前に姿を現さなかった。
 そして、園長本人と、ようやく電話がつながった。
「施設内での、そういう風な、行き過ぎた体罰。これは、有ったんですかね?」
(園長)
「私どもの方に、具体的な事例は一切ありません。」

一方、この施設を監督する神奈川県は、虐待の実態を知っているのか、私たちは県が行っている監査結果を入手した。そこには、職員の通勤手当や消化器の取扱など、虐待とは無関係のことばかり指摘されていた。これでは、いったい何のための監査なのか。
私たちは県の関係者から驚くべき事実を聞いた。

(現役県職員)
「自治体の中で行われている監査全体で、最も大事な事柄を直接触れたりすると、その改善と言うことよりも、その状態が監査まで放置されたという事柄に対する責任が問題という議論が大きくなって、見て見ぬ振りをしてしまうというような状態になるという現実は否定できないです。」

しかし、先頃、県の第3者機関である、「子ども人権審査委員会」が、この虐待の事実を知ることとなり、県も重い腰を上げざるを得なくなった。そして今月(9月)8日、鎌倉保育園の理事会で、園長が理事長を解任されたことを県は発表した。
だが、
(神奈川県児童福祉課 赤川美紀課長)
「あのー、理事長は降りておりますが、理事としては、いまも本院の理事でございます。」

人事を変えただけで、同じ社会福祉法人に運営を続けさせるという、これで施設の運営が改善されるのか。私たちは鎌倉保育園で育ったという、卒園生と接触した。
彼は、園に残る後輩たちを気にかけながら、その心境を語った。

(鎌倉保育園の卒園生)
「園長、副園長が解任された、どうのこうのいっても、その方針でやっていこうというか、そういう人たちが集まっているから、状況的には変わってないと思います。」

 たとえ人事が変わっても、虐待問題を起こしてきた、同じ社会福祉法人が運営している限り、根本的な改善はないと関係者は語る。さらに私たちは、こうした社会福祉法人が運営する児童養護施設の実態を県の関係者から聞いた。

(レポーター)
「こういう状況というのは、あの施設が特別なのでしょうか。それとも他にもあり得るのでしょうか」

(現役県職員)
「事件になるケースは、そんなに多くはないと思うんですが、相当多くの施設で、似たような事柄があって、なにかその、金の成る木というかたちで、施設を勘違いしてしまうような困った経営者がかなりいるんじゃないかと思います。」

 そして、さらに私たちは、別の社会福祉法人が運営する児童養護施設でも、虐待があると聞き、急行した。
 施設の卒園生が、自らの体験を告発する。

「(園長は)その子を木の机の上に、寝っころがせて、なんか包丁?で、足を切り始めたりした子も見たしー、中にー入れられちゃった子もいるしー、乾燥機の中に、回されちゃった子もいるしー、頭からグルングルン回ってました。」

 今から3年前、ある児童養護施設から、13人の子ども達が脱走した。園長の虐待に耐えかねた決死の脱走だった。
その施設とは千葉県船橋市にある児童養護施設「恩寵園」。創設者の2代目が、園長として20年施設を運営している。施設の中で、いったいどんな虐待が行われてきたのか。

 この恩寵園で15年間暮らしてきた卒園生が、自らの体験を告発した。

(恩寵園の卒園生)
「ちっちゃい頃は、みんないつもお尻が真っ青だった。100発とか、全然余裕で殴られていたから。とりあえず、血が出るまでやる。年上の人たち(園児)がー、鎌とかで頭を殴られているのを見たことがあるしー。あと、バットとか、金(属)バットとか、竹刀とか、そういうので殴ったりして、骨が折れちゃった子もいるし、そういうのを結構見てた。」

 子ども達のなかには、金属バットで殴られ、腕などを骨折したものもいたという。そして、暴力は園長を中心に、日常的に行われていたという。それだけではない。子ども達が施設の廊下を走ったり、ちょっとしたいたずらをしたことが園長に見つかると、

(恩寵園の卒園生)
「乾燥機室が有るんですよ。で、そこにー、ちっちゃい頃とか、入れられてー、なんか、例えば、悪いことをしたりしたら、連れて行かれて、夜、中に入れられちゃった子もいるしー、乾燥機の中に。で、回された子もいるしー、頭からグルングルン回ってました。」

 子ども達は、この部屋を恐怖の乾燥機部屋と呼び、恐れていたという。
この常軌を逸した園長の虐待の数々。告発はさらに続く。

(恩寵園の卒園生)
「幼稚園のころなんかは、同じ年の子が4人くらい、米袋の中に入れられて、壁とかに吊されていた。こともあるしー」

さらに、施設で禁じられていた装飾品を、ある少年が身につけていたときのとだった。

「それ(プロミスリング)を足につけている子がいて、園長先生に見つかっちゃって、みんな放送で呼ばれて、みんな集まってから、その子を机の上に寝転がらせて、包丁?、で足切り始めた子も見たしー」

じゃ、血が出るでしょう。切れちゃう・・・。

「血が出てやめた、と思います」

園長は、施設の子を館内放送で呼びつけ、子ども達の目の前でテーブルに縛り付けられた少年の足を、包丁で切りつけたという。こうした見せしめの虐待で、園長は子ども達に恐怖を抱かせ、支配していたという。

施設に出入りし、子ども達と接触のあった関係者も、園長のことをこう語る。

「第1印象で、恐いというイメージを受けました」

子どもにしたられているとか・・・、

(恩寵園の関係者)
「あっ、全然ないですね。えー、抱きついていこうなんてとんでもない、払いのけてしまいそうな、そんなイメージですね。あの、私たちが思うほど、自分はそんなに悪いことをしているのではないんだと、思っているんじゃないでしょうかね。自分は、こう施設をやっているし、子ども達の面倒を見てやってるんだという気持ちが、有るんじゃないでしょうか。」

さらに、園長について、別の関係者は、

(現役県職員)
「長年にわたって体罰が繰り返されてきた。もう園長としてはまったく不適格だ」

このような人間に園長をやる資格はない。にも関わらず、その不適格な人物が、今もなお園長に納まっているのである。

私たちは、この園長への直接取材を恩寵園に申し込んだ。
「大浜園長、お戻りに・・・」
「出られています。」
園長はいないという。

しかし、その数分後、なんと園長らしき人物を乗せた車が、逃げるように走り去っていった。
「こっちで追っちゃうとあれだから・・・」

この恩寵園で、変わらぬ体罰の日々に耐えかねた子ども達は、千葉県の知事宛に悲惨な現状を訴える手紙を書いた。それは子ども達にとって、自分の暮らしている施設の園長を訴えるという、ともすれば、身の危険にもさらされかねない危険な嘆願書である。
しかし、それに対する知事からの返答の手紙は、「明るく豊かな千葉県を作るためにお力添えいただき厚くお礼申し上げます。皆さんも健康に気をつけて頑張って下さい。」
子ども達への手紙は、すべて同じ内容。しかも、知事からの手紙は、園長のいる施設に届けられるという配慮のなさ。さらに、子ども達の声を聞きながら、県は、いまだに園長を辞めさせようともしないのである。
なぜ、県は処分に踏み切らないのか。元県の職員に聞いた。

(元県職員)
「とりあえず今起こっている問題を、収めてしまえば、また前と同様に、何とかなるんじゃないかとという事が優先したと思うし、措置を委託している県側の責任を問われるわけですから、そこまで被ってですね、やるかどうかは、やっぱりそういう決断はしないだろうなと」

そこで私たちは千葉県に取材を申し込んだ。が、取材拒否。

(日本テレビレポーター)
「すみません、日本テレビですけども。なぜ、取材をさせていただけないんでしょうか」
(千葉県監査指導室 八木安夫室長)
「いや、それはお断りします」
(日本テレビレポーター)
「お話しして下さいよ」
(千葉県監査指導室 八木安夫室長)
「・・・」
(日本テレビレポーター)
「なぜ、しゃべれないか、教えて下さいよ」
(千葉県監査指導室 八木安夫室長)
「・・・」
(日本テレビレポーター)
「八木さん、八木さん」
(千葉県監査指導室 八木安夫室長)
「取材はお断りします」
(日本テレビレポーター)
「体罰の張本人の園長が、そのまま、あの施設を続けていてもいいというのが、千葉県の見解なんですね」
(千葉県監査指導室 八木安夫室長)
「取材はお断りします」
(日本テレビレポーター)
「お話して、いただきたいんですよ」

取材を一切受け付けない千葉県。児童養護施設を所管する厚生省は、この問題をどうとらえているのか。

(厚生省児童家庭局家庭福祉課 森望専門官)
「基本的には、各都道府県で適切に対応していただきたいと」
(日本テレビレポーター)
「それはもう、体罰という次元ではないんですよ。明らかにこれは虐待ですよ。へたをすれば、これは傷害ですよ。それに、場合によっては傷害罪になりうるひどいことが行われているんですよ。そういった人間でも、今もって園長が出来ていること事態が、やはりおかしくありませんか」
(厚生省児童家庭局家庭福祉課 森望専門官)
「私共、必ずしもも今おっしゃった事を事実として確認しておりません。千葉県から報告を受けておりませんので」
(日本テレビレポーター)
「虐待のひどい部分は伏せておこうというところが、どうも意図に感じられても仕方ないような報告の仕方をしていますよね」
(厚生省児童家庭局家庭福祉課 森望専門官)
「フー、だとしたら、それは大変な問題だと思いますね」
(日本テレビレポーター)
「園長はですね。いま、ホントその職に就いている事自体、異常事態ですよね」
(厚生省児童家庭局家庭福祉課 森望専門官)
「現時点で考えれば、そういう判断だと思いますね」


「今すべきことをしない行政の罪は大きいですね」

「このままでは、とても子ども達は守れませんね」

「取材をした松岡ディレクターです。様々な事情で家族と暮らせなくなった子ども達が、安らげる場所であるはずの児童施設で、これで、より傷ついてしまうということが起きているということですか」

「そうですね。本当に子ども達、施設で暮らす子ども達というのは、親御さんの元から離れて暮らしているわけですから、自分からなかなかSOSを外に発することが出来ないんですよね。ですから、この虐待受けているような場合のケースでも、なかなか外に漏れずにあるという、本当に今回のケースにしても、氷山の一角に過ぎないと思うんですよ。で、その問題が発覚したとしても、社会福祉法人としては、例えば理事長であったり、施設の園長を解任するといった、人事面のことを変える程度のことしか、しないというのが現状だと思います」

「県や厚生省は、出来ることがあるはずでしょう」

「そうですね。まったくそのとおりだと思います。ですから、そのために問題が発覚した際には、社会福祉法人そのものを変えるということが、必要だと思うんですね」

「その権限は、県に有るんですか」

「そうですね。行政は強い権限、例えば解散させる、というような権限があるわけですから、それをどんどん行使して行くべきだと思うんですね。そうしないと、子どもの命を守るということを考えていかないといけないと思うんですね」

「話しに出てきた虐待が事実だとすると、もう犯罪でしょう?」

「立派な犯罪ですね。暴行傷害。場合によっては死ぬこともありうるわけですから。今、神奈川県警も千葉県警も、非常に評判が悪いですけど、大多数の警官は真面目に仕事しているわけだから、こういう犯罪行為があれば、直ちに入って、実際に摘発すべきですよね。見てて許せないですよ」

「巡回するなら巡回するで、入れるところまで」

「いや、もう、ちゃんとした証言が、テレビでさえ取れているわけですから、捜査する気になれば、一週間くらいで逮捕状くらい取れるわけですよ。やればいいんです」

「それから、厚生省は報告が無いからといいましたが、監督官庁は、報告を待つだけの身なんですか?」

「いや、そうじゃないですよ。それは当然自分の仕事ですからね、積極的に報告を求めるべきだし、だいだい人の心の痛みを自分の心の痛みにしないんですよね。さっきの、お役人の顔を見てましてね、自分の子どもがああいうふうになっていたら、あんなこと言ってられないでしょう。非常に、極めて、役人的というか、官僚的というか」

「役人的というのが、そういう言い方の代名詞になっているということが、おかしいんですね」

「まあ、非常におかしいですね。だから、どうしてもっと積極的に、自分の権限の範囲内のことなんですから、そういう悪が行われていることについて、正そうとしないのか」

「ファックスが届いています」

「私も、中学生の頃、藤沢市にある児童相談所の保護所で、7,8時間も正座をさせられたり、ビニールパイプの棒でお尻を何十発も叩かれとされました。何度も逃げ出したかったけれども、逃げてつかまったら、もっとひどいことをされるのが恐くて、逃げられませんでした。家庭などで問題があって、児童相談所に行くのに、そこでこんな状態では、行き場が無くなります。大きな問題です」

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