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判 決 要 旨
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from 2000/2/14


平成9年(行ワ)第七一号損害賠償請求事件(平成一一年九月一六日弁論終結)

 判決

 主 文

   一 原告らの請求を棄却する。
   二 訴訟費用は原告らの負担とする。

 (判決要旨)
  1.  証拠によれば、市川児童相談所に園長の体罰等を訴える匿名電話があった平成七年八月二三日以前の恩寵園において、園長(及び他の数人の職員)による園児に対する体罰等が頻繁に行われていたこと、右体罰等は偶発的に生じたものではなく、園長の管理主義的教育観とそれを実現する手段としての体罰等を肯定する考え方に基づいて行われたいたことが認められる。

  2.  平成八年三月までの県職員による指導等にもかかわらず、体罰等が発生していることや、園児が集団で恩寵園を逃げ出して体罰等を訴えるといった行動を起こしていることから、それまでの指導等によって体罰等発生の根底にある体罰を肯定する考え方を改めさせ、かつ、体罰等の発生を防止できるような指導体制等を構築することが出来なかったのであるから(その後の県職員の指導によっても右の点を抜本的に改善することができなかった)、被告は、園児が集団で恩寵園を逃げ出したことを知った時点、即ち、平成八年四月五日前後の時点で、体罰等の再発を抜本的に防止することを目的として、園長の解職を含む指導体制等の改善をはかることを法人恩寵園に勧告すべき作為義務が生じたものと解するのが相当であつて、右勧告をすべき状態は、その後も継続していたものと認められるから、被告が右勧告をしなかったことは違法であつたと認めざるを得ない。
    (原告らは、被告は法人恩寵園に対し、園長の解職を命ずべきであった旨主張するが、法四六条三項は「施設の設置者がその勧告に従わず、かつ、児童福祉に有害であると認められるとき」に改善命令を発することができると規定しており、被告にいきなり「園長の解職を求める改善命令」を発すべき義務があるとは認められない。また、被告は、法四六条三項に基づく改善勧告・改善命令を出すか否か、どのような内容の勧告または命令を出すか、あるいはその前に適当な指導をするか否かは、知事の判断に任せられており、仮に、原告らの主張する事態が事実であつたとしても、当然に園長の解職を命じなければならないわけではない旨主張するが、本件の場合は、その権限の不行使が作為義務違反として違法となる要件を充足しているものと認められるから、被告の右主張も採用することはできない。)

  3.  しかしながら、県から法人恩寵園に支弁された措置費に職員等の人件費という要素が含まれているとしても、措置費の額は措置された児童の数を基準として算定されるものであるから、園長に解職されるべき事情があったとしても、当然に園長の人件費相当分の減額を行うべきとの結論を導くことはできない。また、児童福祉法施行令一八条、通達「社会福祉施設における運営費の運用および指導について」あるいは委託契約の不履行に基づき、措置費について園長の人件費相当分の減額を行うべきである旨の原告らの主張は採用できない。

  4.  よって、被告が、恩寵園における体罰等の再発を抜本的に防止することを目的とする園長の解職を含めた指導体制の改善を勧告しなかったとことが違法だからといって、措置費の内の園長の人件費に相当する部分を減額しないで措置費を支弁したことが違法な公金の支出にあたるとは認められない。
    (以上)