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恩寵園入所児童(小学5年以上)・保母等との
面接調査結果要約(報告)
カウンタ
from 2000/1/23

恩寵園入所児童(小学5年以上)・保母等との面接調査結果要約(報告)

平成7年10月12日

千葉県児童相談所長協議会     
中央児童相談所 所長 前田茂則
市川児童相談所  〃 高橋宣昭
柏 児童相談所  〃 漆原正行
銚子児童相談所  〃 永井 聡
君津児童相談所  〃 長森 孝
千葉市児童相談所 〃 小池 明

  1. 目 的
     平成7年8月23日、市川児童相談所に匿名の電話があり、その内客は「(恩龍園長に)殴られた。手に持っていたティッシュに火をつけられた。刃物で脅された。」等、恩寵園内で入所児童に対し、体罰が行われているというものであった。
     同園では、過去にも入所児童に対する体罰が取りざたされた経緯があり、今回、9月1日に臨時の所長会議を開催し、事実関係の調査を行うとともに、今後の対策を検討することが決まったものである。

  2. 調査の方法
    (1)園長からの聞き取り(平成7年9月4日、市川児童相談所)
    (2)入所児童及び職員からの聞き取り(平成7年9月12日、恩寵園)

  3. 調査の対象
     入所児童及び職員からの聞き取りは、児童については小学校5年生以上を対象とし、職員については主任、副主任及び対象児童の担当保母とした。


  4. 調査結果の報告
     調査結果は10月2日の臨時所長会議で報告され、10月4日、児童家庭課長に報告し、10月12日に恩寵園長等に結果内容を伝えるものである。

調査結果
  1. 体罰に閏しての事実関係について
    調査の結果、対象児童の多くが園長から殴られた経験があることを話した。又「ティッシュに火をつけられた」、「刃物で脅された」と話した児童がいた。職員からも体罰に関する話があり、匿名電話の内容を含め、園内で入所児童に対する体罰が行われていたと判断する。

  2. 児童処遇上の問題点について
    児童及び職員からの聞き取りにより、園内での体罰の根底にあると考えられる問題点をいくつか整埋してみた。

    1. 園長及び職員が「児童の行勤一つ一つに細かく口を出す」様子が伺われた。
      これは、関わる側が児童に対して口の聞き方、時間の使い方、宿題をしたかどうか、箸の持ち方、ほうきの使い方、立ち居振る舞いなどすへてにわたり事細かに□を出し、管埋しようとする姿勢である。
      このような関わり方をされると、児童の多くは次のような思いを持つようになると考える。

      1. 一部始終を職員から見られ監視されているとの気持ちになる。
      2. 自分のとった行動が、事細かに注意され、時には否定されることから、児童自身の内的世界が侵入され、干渉されているとの感情を持つことになる。
      3. 特定の正しい行動に向かって統制され、児童自身が締め付けられているとの感情を持つことになる。
        (指導する側は、児童に教えることが責務であり、将来的に児童の社会適応に役立つものとの考えから、通正な指導であるとの信念がある。)

       以上の結果、児童たちは自分の素直な気持ちからではなく、「先生は何を求めているのだろう」、「先生は何を正しいと思っているのだろう」等考えることになる。
       具体的には、児童達は園長が正しいと思っている考えを言わなければ駄目であり、違うことを言うと園長に怒られるとの思いから、そのことに全エネルギーを集中することになる。そのため、普段から児童達は、自分がどうしたいのか、今何を感じているのか等児童自身が自分の感情を素直に出すことが出来ず、生き生きとした気持ちを抑えるようになってしまう。

    2. 職員が児童達の「後ろ向きな気持ち」を否定し、ひたすら「前向きな気持ち」を持つように、しった激励する。
       まだ遊びたかったり、いけないと言われていることをわざとやってしまったり、又宿題をなかなかやろうとしなかったり、ポーッとしたり、ゴロゴロしたりと誰しもがこのような「後ろ向きな気持ち」を持ちたくなることがあるが、これは、大人でも児童でも普通にあることであり、そのような気持ちを頭から否定する側は、児童の「後ろ向きな気持ち」を発見すると、「中学生なのだからもう少ししっかりしてほしい」との気持ちから、叱責したり、舌打ちしたり、不機嫌な表情を示すことになる。
       児童の側から見ると、ほっとする時問や空間がないように感じられ、慢性的な緊張状態におかれていることになる。そのような状況の中では、児童も担当保母との間に信頼関係を持ちずらくなり、児童の方でも「頑張ろう」という気持ちがなかなか沸いてこなくなるのもやむを得ないと思われる。そうこうしている内に、また「中学生なのだから」と、しった激励が飛んでくるという悪循環になってしまう。

    3. 養護施設では多くの児童が集団生活をしていることから、一人一人が勝手な行動をとることは処遇上問題である。その上入所してくる児童の多くがきちんと家庭で躾られていない場合もある。そのため、施設側ではきちんとした枠組みのある生活をとおして自立を援肋することが必要であると考える。その手段として、体罰も必要であるとの思いが感じられた。

    4. 園長及び主任保母がなかなか若い保母を信用できず、基本的に「今の若い人は何もできない」との強い思いを持っているように感じられた。

     以上のことを要約すると。
     『児童は、こう躾なければならないとの枠組み(信念)があり、それからはみ出ることは許容されない。児童の自由度は制限され、園長等の強い管理下で生活することが余儀なくされているように感じられる。
     結果として、児重の行動は容認されることが少なく、園長等の規範のもとに行動することが強力に求められることになっている。』と考える。

  3. 今後の対策について
     10月2日の臨時所長会議で、今後の対策として次のことが協議された。

    1. 体罰肯定の姿勢について、是正する必要がある。
    2. 日常の処遇の細部にまで園長が関わるなど、直接処遇職員、副主任、主任及び園長の役割が錯綜しているように見受けられるので、指導体制、児童指導班等の改善が必要である。
    3. 児童相談所としては、園に対し処遇上の援肋をしたいと考えているので、具体的な方法について早急に園側と検討したい。