- 原告代理人
あなたは、お母さんはどうしましたか。
- 死にました。
あなたが幾つのときに、お母さん亡くなったんですか。
- 生まれて六箇月。
あなたは、それからは、だれに育ててもらったんですか。
- 乳児院に入って、二歳で恩寵園に行きました。
恩寵園に入ったのは、あなたが二歳のとき。
- はい。
そのときに、恩寵園に来たことは覚えていますか。
- 覚えていません。
恩寵園には二歳で来たんだよというのは、後で聞いたことですか。
- はい。
恩寵園には、いつまでいましたか。
- 一六歳。
今は幾つですか。
- 一七歳。
ということは、恩寵園を出たのは、去年ですか。
- はい。
去年の何月か覚えてますか。
- 三月か四月。
平成一。年の三月か四月だったということですね。
- はい。
では、あなたが一四年間恩寵園にいた間に、いろいろなことがあったと思うんけれども、今日はそのことについて聞きますから、大分つらいこともあると思うんだけれども、しっかり答えてください。あなたたちは、小さいときから、園長先生、あるいは保母さんたちから、何か悪いことをすると、たたかれるということはよくありましたか。
- ありました。
小さい子供たちが何か悪さをしたということで、どんなふうにたたかれましたか。
- 廊下を走ったりしたら、おしりを五○発以上たたかれたりしました。
どうやってたたかれるんですか。押さえつけられて。
- 押さえつけられてです。
ひざの上に押さえつけられてたたかれるんですか。
- はい。
五○回たたかれるというのは、かなり痛いものですか。
- 痛いですね。
あなたたち子供たち、おふろに入ると、みんなそれぞれ裸が見えるよね。
- はい。
おしりにはどういうあざがあったかというのは覚えてますか。
- はい。
どんなふうになってました、みんなのおしりは。
- 青いあざが、ぽつぽつたくさんありました。
それは、どの子のおしりにもあったあざですか。
- はい。
みんなそれは、おしりをたたかれてできたあざですか。
- そうです。
それはもう、当たり前みたいな感じだったのかしら。
- はい。
それから、乾燥機に子供が入れられるという、そういうおしおきがあったということを言ってましたね。
- はい。
それは、どういうおしおきなんですか。
- やっぱり廊下を走ったり、そういう小っちゃなことで、乾燥機の部屋に連れていかれて、中に入れられて、一回転とかなったり。
その乾燥機というのは、子供が入れるほど大きな乾燥機があったんですか。
- はい。
その中に子供が入れられちゃうわけね。
- はい。
で、ぐるんと回転させられるわけ。
- たまに、一回転。
それは、乾燥機が熱いこともあったのかしら。
- いや、分かりません。
あなたは入ったことがない。
- はい、私はありません。
ほかの子がされてるのを見たということですね。
- はい。
それから、乾燥機部屋という言葉が出たけれども、乾燥機が置いてある部屋があったんですか。
- はい。
そこは、あなたたちは、何と呼んでたの。
- 恐怖の乾燥機部屋。
どういうことをされたから、恐怖だったんですか。
- 真っ暗なんですよ。で、小っちゃいときに入れられて、ドア閉められてドンドンたたかれるから、怖くて、そういう名前つけました。
中に入れられて、外からドンドンドンドン、ドアをたたかれるわけですか。
- はい。
それって、どうして、ドンドンドンドン戸をたたいたりするわけですか。
- 怖がらせようとしているように思いました。
それは、あなたも入れられたことはありましたか。
- はい。
幾つくらいだったか覚えてますか。
- 小学生か幼稚園。
それは、どんなふうになると出してもらえるんですか。
- 私の場合は、すごい泣き叫んで、出して出して言って、それでもちょっと出してくれなくて、一五分間くらいずうっとやられてから、出されて。
頭の中が真っ白みたいになるようなところまでいっちゃうんですか。
- はい、なりました。
矢神寸前だったというような感じだった。
- はい。
それから、熱いおふろに長くつかりなさいという、そういう罰もありましたか。
- はい、ありました。
何秒ぐらいつからなきゃいけないの。
- 一○○秒。
それをすると、どうなっちゃう、体は。
- くらくらする。
それから、小さい子たちも含めて、何時問も正座させられるというようなことは、しょっちゅうだったですか。
- ありました。
幼児さんたちが何時問も正座させられると、どうなっちゃう。
- 歩けなくなってました。
あるいは、食事を抜かれるということは、どうでしたか。
- ありました。
それは、小さい子供たちも食事を抜かれるということだったんですね。
- はい。
そういう、今言ってたようなおしおきは、主にだれがやってたものですか。
- 園長先生。
保母さんたちはやっていませんでしたか。
- やってました。
園長先生は、あなたたちにとって、どういう人でしたか。
- 怖いイメージ。
例えば、みんながいる部屋に園長が入ってくると、子供たちはどういう状況になりましたか。
- 何にも一言もしゃべりませんでした。
静まり返るという感じですか。
- はい。
あなたが小さいとき、大きな子供たちがもっとひどい罰を受けているのを見たことがありますか。
- はい。
どんな罰を受けているように思いましたか。
- バリカンで頭をそられてたり、かまとかで頭殴られたように見えました。
頭を殴っているときは、子供たちはどういうふうにしているんですか。
- 正座。
殴る道具は、かま以外に、ほかには何がありましたか。
- 鉄バット、竹刀。
そういうので殴られると、子供たちは血を流すということはありませんでしたか。
- ありました。
けがをして血を流すのは、しょっちゅう見てましたか。
- はい。
けがをした子供たちは、医者に連れていってもらえましたか。
- もらってませんでした。
どういう手当てを受けていましたか。
- 生活指導みたいな先生がいて、その人が包帯で手当てしてました。
学校で、そのけがはどうした、というようなことを聞かれるようなことはなかったですか。
- そういうけがのある人は、学校に行かしてもらえませんでした。
学校を休まされたということですか。
- はい。
さっき、バリカンで頭をそったと言いましたね。
- はい。
普通にバリカンで髪の毛をそるんですか。
- 違います。
どうやってそるの。
- 星型にしたり。
真ん中だけをそり残すみたいな。
- そういうの。
そういうふうに、髪の毛を残してそっちゃうんですね。
- はい。
どうしてそんなそり方をしてたか覚えてますか。
- 年上の人に聞いたら、脱走しないためって言ってました。
そういう頭にすれば、恥ずかしくて脱走ができないということですか。
- はい。
その子供たちは学校はどうしましたか。
- 行ってなかったと思います。
頭をそられたのは、男の子だけですか。
- 女の子もいました。
頭をそられた女の子は、学校はどうしましたか。
- 行ってました。
丸妨主にされましたか。
- はい。
中学生でしたか、小学生でしたか。
- 中学生です。
そのほかに、あなたから見たら大きなお兄さんたちですね、中学生の男の子なんかが、殴られる以外に罰を受けてたということで、記憶していることはありませんか。
- 裸にして立たされてたり、殴られたり。
何か、縄で縛られてたようなことは覚えてませんか。
- 覚えてます。
どういう状態だったか、ちょっと説明してくれませんか。
- 保母室の前で、素っ裸で、なんか一杯体中巻かれて、立ってた人がいた。
あなたは、それを、どこへ行くときに見たんですか。
- 御飯食べに行くときに見ました。
その子供の御飯は、どこにありましたか。
- お皿にあって、床に置いてありました。
それから、中学生の女の子が、やはり何かされていることを、ほかに覚えていませんか。
- 中学生の女の子の洋服をベランダから落としたり、階段から突き落としたりしているのを見ました。
女の子自身が突き落とされていたということですか。
- はい。
女の子が下着姿で立たされているなんてことがあったんじゃないですか。
- ありました。
どういう下着姿にされていたんですか。
- 普通に下着だけ着けて。
ブラジャーだけ着けてということですか。
- はい、部屋に立ってる。
みんなが見られるところに立っているんですか。
- 女の子には見られます。
それは、何年生ぐらいの人でしたか。
- 高校生。
それから、何度か出てきているんだけれども、包丁で足を切られた男の子の事件、覚えていますか。
- はい、覚えています。
その子は、何をしたんですか。
- 帰省があるじゃないですか。
帰省というのは。
- 一週間だけ家に帰れる。それで、その子のお姉ちゃんが、その男の子が帰ってくるからって、プロミスリングを作ってくれて、で、プロミスリングをあげて、手にすると見つかっちゃって怒られるから、足にしてたんですよ。で、半ズボンはいてて園長先生に見つかっちゃって、で、全員放送で呼ばれて、その男の子を机の上に寝かせて、押さえつけて、包丁で足切ってました。
それは、あなたたちは、どうやって見たんですか。
- 放送かかったから、みんな集合して立ってたんだけど、見てらんなくて、下向いたりして。
みんな見ろと言われたわけですか。
- いや、口では言われてないんだけど、そういうプロミスリングとかつけてたら、おまえらもこうなるぞ、みたいな感じで、見せつけでやってました。
その子は、足をどんなふうに切られてたのかしら。
- 包丁。
その子、寝かされてたわけね。
- はい。
で、押さえられて、包丁をどこに当ててたの。
- ここ、ふくらはぎの(膝の下の後ろに手を当てる)。
そこに包丁を当てられて、それで、その包丁を、園長はどうしてたの。
- こうやってやってた(包丁を手前に引いて切るような動作をする)。
血は出てきたの。
- 血が出てました。
あなた、それ見てて、どう思いましたか。
- 倒れそうでした。
泣きましたか。
- こらえました。
その子のお姉ちゃんも、それ見てたの。
- 私の隣にその子のお姉ちゃんがいて、つらそうでした。
今の男の子、何年生ぐらいだったかな。
- 小学校高学年でした。
それから、ほかに覚えてることない、男の子たちが園長にされたことで。
- ペニス切られそうになったりして。
何が理由でそういうことになったか、ちょっと話してみて。
- 聞いた話によると、じゃれ合ってた、布団の中で。
そしたら。
- そしたら、園長先生に見つかって、何やってるんだと言って、保母室に連れていかれたんですよ。私は、保母室の外にいて、叫び声しか聞いてないんですけれども、はさみを当てられたりしてて。
ペニスにはさみを当てられたの。
- はい。
それは、あなたが見たんじゃないの。
- はい。
だれかほかの子が見ていたのを聞いたと。
- そこにいた子に聞きました。
あなたは、叫び声だけは聞いたんですか。
- はい。
ほかに、食事のことで何か覚えてることありますか。
- 男の子が二人いて、嫌いなものがあって隣の人に食べてもらったら、見つかっちゃって、そんなに食べたいんだったらたくさん食えって言って、ほんと、小学生じゃ食べられないぐらい、御飯も大盛りで、おかずも二倍ぐらい出されて、そこでまたみんな放送で集合かけられて、みんなが見てる前で食べさせられました。
その子、食べられましたか。
- 吐いちゃって。そしたら、殴られて、全部食えって言われました。
あと、集会のときどんなことがあったか、覚えてますか。
- 私の隣に気分の悪い年上の男の人がいて、気分が悪いんでトイレに行っていいですかって感じで言ったら、うるさいって言って、ずっと立たされてて、結局吐いちゃって、そしたら、園長先生が、そんなの、おまえの集中力が足りないからだと言って、怒り出して。
気分が悪くなったというようなことで、集会から出してくれるというようなことはなかったんですか。
- なかったです。
トイレに行きたいときはどうでしたか。
- 行かせてもらえませんでした。
それから、子供たちは、殴られそうになったときに、どういうふうなことをしてたか覚えてますか。
- 殴られそうになったときに、こうやって構えちゃうじゃないですか。
自分を守ろうとして構えるということ。
- そしたら、園長先生は、ボクシングか、とか言って、ガンガン殴り出すんですよ。そういうのがありました。
それから、鶏のことを覚えてるかな。
- はい。
話してみて。
- 小学生の男の子が、中学生か忘れちゃったんですけれども、鶏、飛ベると思って、遊具の上から飛ばしたんですよ。そしたら、鶏、飛べなくて落ちちゃって死んじゃったんですよ。そしたら、園長先生が、一晩中死んだ鶏と一緒に寝ろと言って、一晩中ずっと隣で鶏と一緒に寝かせられてました。
その子は、鳥の死骸を自分の布団の中に入れられたわけですか。
- はい。
今のは大体見てきたことだと思うんだけどね、今度は、あなた自身がされたことを聞きますね。あなたが、一番小さいころから、先ほど、おしりをたたかれたとか、恐怖の乾燥機部屋ということがあったけれど、それ以外に覚えていることで、どんなことがありますか。
- 幼稚園のころ、麻袋に入れられてました。
麻袋というのは、どんな袋ですか。
- 米が入ってるでかい袋。
そこに入れられるわけ。
- はい。
どうして入れられたか覚えてます。
- 廊下走ったとか、そういうこと。
何回ぐらいやられたか覚えてる。
- 結構、五回以上は入れられました。
麻袋に入れられて、それで、どうされるんですか。
- 私以外も、みんな入れられて、つるされてるんです。
どこにつるされるの。
- げた箱のところとか、道路。
道路に。
- 小学校のフェンス。
フェンスにつるされてたの。
- はい。
どのくらいの時間つるされてたか覚えてますか。
- 三時間ぐらい。
そのときは、袋の口は開いてるの、閉まってるの。
- 開いてるときと縛られてるときがあって、縛られてるときに抜け出そうとすると、があってやられるの(押さえつける動作をする)
あなたの洋服のことで。
- 御飯食べ終わった後に、そでがここら辺まできちゃって。
そこら辺というのは、手首より長くなっちゃって。
- ちょっと長いくらい。それを園長先生に見つかって、園長室に呼ばれて、その服を着るか脱ぐか、どっちか選ベって言われて、迷ってたら切り出したから、焦って脱いで渡して、裸で下着だけ着けて、部屋まで帰りました。
恩寵園には、服の長さで規則があったの。
- はい。
どういう規則があったんですか。
- 手首より上にきちゃだめ。そでが長いのはだめ。
あなた、ちょっと長かったら、切られちゃったの。
- 切られちゃった。
結局、切るか脱ぐかと言われて、脱いだのに切られちゃって。
- いや、切られたから、焦って脱いだんです。
結局、その洋服は着られなくなっちゃったの。
- はい。
それから、あなた、服を全部没収されたことあったのね。
- お気に入りの服があって、ずっと着てたら、おまえはこじきかって言われて、持ってた服全部没収されて、その日はずっと裸で立ってて、学校にも行けなかったです。
それ、何年生のときですか。
- 小学生。四年生ぐらい。
それから、あなた、小学生のときに、骨折のけがをしたことがありましたか。
- はい。
そのときは、どんな対応をされましたか。
- おふろに入ってて、女の子に手引っ張られて折れちゃったんだけど、痛い痛い言ってて、だけど、病院に連れていってくれなくて、どうしても痛いって言って、やっと連れていってもらったとか。
信じてもらえなかったんですね。
- はい。
それから、園の行事で、通信簿が返ってきたとき、、そのときはどういうことをするんだった。
- 園長先生に見せなくちゃいけないんですよ。で、通知書を見せる格好が決まってた。
まず、どこで見せるの。
- 園長室。
一人ずつ。
- はい。
そして、どういう格好で見せなきゃいけないの。
- ちゃんと、通知表を見てくださいと言ってから、開いて、見やすいように、こうやって出すんですよ(両手で通知表を差し出す動作をする)。
そのときに、園長先生はどうするの。
- やっぱり怖いから、なんか逆さまに出しちゃったりすると、ぼんと捨てられたりして。で、通知表の成績が悪いと、私の場合は、そろばんで頭があってやられたり、ずっと立たされたりしてました。
ほかにはどんな罰を受けた子がいた、通知表の成績が悪いということで。
- 正座とか、一年間分のドリルを今日中にやれとか、クリスマス会に出してもらえなかったり。
あなたたちの園でクリスマス会というのは、子供たちにとってどんな楽しみがあるの。
- 御飯おいしいし、ケーキ出るし、楽しみだった。
ケーキ食べられるのは、一年間に一度きり、クリスマス会のときだけだったの。
- はい。
そのクリスマス会に出られないということは、その子は一年間ケーキ抜き。
- ケーキ一杯もらうから、残りものとして出るときもあるんですよ。そのときは食べるけど、その日は食べられない、クリスマス会。
午前中の、成田課長の証人尋問、聞いてました。
- はい。
教護院の話が出ましたよね。
- はい。
あなたは、その話聞いてて、どう思いましたか。
- うそついてると思いました。
この園の中で、教護院のことって、どんなふうに話されてたんですか。
- 男の子が三人くらい一気に入った時期があったんですよ、教護院に。その子たちは、別に大した悪いことしないのに、いきなり飛ばされてました。さっき、成田課長が、本人の意見と家族の意見を聞いて同意した上で入れると言ったんですけど、そんなことはなかったと思います。
その大きい子たちには、教護院ということは、かなり園長が言ってたの。
- 私は、おまえもそろそろ教護院に入れるぞ、みたいな感じで脅されました。
あなたは、自分で自分の体を傷つけるというようなことを、恩寵園にいたときにやったことがありますか。
- はい。
どんなことをやってましたか。
- 手切ったり、ガラス割ったり。
手切ったというのは、手首を切ったということ。
- 手首も切ったし、腕とか。
どういうときに、そういうことをしたの。
- いらいらしてるとき、怒られたりとか。で、園長先生がみんなに、私は不良だから近づくなと言って、そういうことをされたから、頭にきて切ったりしました。
それから、ガラスを割ったというのは、どういうときだったの。
- 怒られたり、あと、血とか見ると安心するから、切ったりしました。
あなたは、高校一年まで恩寵園にいたわけね。
- はい。
その間、恩寵園で、何か先生たちにすごく反抗的になるというようなことはあったかしら。
- はい。
いつごろ。
- 部活が終わってから、中三の。
それまでは、逆らうというようなことはしなかったの。
- はい。
どうして。
- 怖かったから、園長先生が。
中三になって、どうしてそういう形で逆らうというようなことが出てきたの。
- 保母さん辞めちゃったりして不安だったし、みんな優しいふりして、大人たち近付いてきて、だけど、外見だけで、結局何にもしてくれなくて、反抗するようになっちゃった。
あなたたちは、いろんな暴力とか仕打ちとか受けるでしょう。そのことを、子供たち同士で話し合ったりするということはありましたか。
- はい。
どんなふうに話をしていましたか。
- 親に捨てられたんだから、よくない。
よくない。どういうことかな、それは。
- 親に捨てられたんだし、どうでもいいでしょうと。
自分たちでそう思ってたんですか。
- はい。
だれかからそう言われたということはなかったですか。
- 私も思ってました。
親に捨てられたんだからしょうがないんだと。
- はい。
だれかに相談をして、この状態を助けてもらいたいと思ったことはなかったんですか。
- ありましたけど、外にちくったら殺されると思ってました。
だれに。
- 園長先生。
児童相談所の福祉司さんとかに相談しようと考えたことってありましたか。
- 思ってませんでした。
そういうところに相談できるということは知らなかったんですか。
- 知らなかったです。
だれか、そういうことを相談しなきゃと思ってた子はいなかったんですか。
- 児童相談所に行きたいと言ってる子はいました。
その子たち、どういう行動を執ったんですか。
- 電話番号調べたんですけど、隠されてて、全然電話番号も分かんないと言ってました。
平成八年の四月、一部の子供たちが脱走するという事件がありましたね。
- はい。
あなたは脱走しましたか。
- してません。
あなたは何で脱走しなかったの。
- 部活やってたし、学校にも友達いたし、ちっちゃい子とか逃げられなかったから、残りました。
あなた、小さい子が好きなのね。
- はい。
幼児さんたちのお世話するの好きだった。
- はい。
- じゃあ、脱走することになった理由ということは知っていますか。
- はい。
どんなことがあったんですか。
- 最初のきっかけは、園長先生と保母さんがかみ合わなくなって、で、保母さんたちが私たちに、もう耐えられない、もう辞めるねということを告げられて、で、みんなも耐えられなかったら逃げていいよって何度も言われて、児童相談所に相談しに行きな、みたいな感じで言われて、私たちとしては、虐待に耐えられなかったから、保母さんがきっかけくれたから、みんなで逃げることになりました。
保母さんが辞めるっていうことは、あなたたちにとっては、ものすごく不安だったんですか。
- 不安でした、支えてくれてたから。
支えてくれてる保母さんたちがいなくなるということは、すごく大変なことなの。
- うん、もっとやられるんじゃないかと思って。
園長から。
- はい。
それで、いろんな児童相談所に、それぞれ逃げていったというのは知ってますね。
- はい。
最初に帰ってきた子供たちは、どこからでしたか。
- 中央児童相談所。
いつ帰ってきたの。
- その日です。
その日だと思ってる。
- その日でした。
どうして帰ってきたんですかって聞いた、子供たちに。
- 聞きました。そしたら、中央児童相談所の人が、君たちも悪いことをやってるんだからしようがないって、話聞いてくれなかったと言ってました、帰りなさいと言われて。
子供たちがばらばらと帰ってきたと思うんだけど、児童相談所の人とか県の人とか、そういう人たちが園に来たことは覚えてますか。
- はい。
あなたも話を聞かれましたか。
- はい、市川児童相談所に聞かれました。
そのとき、どんな話をしましたか。
- 最初に、やられたことを言ったんだけど、あなたも悪いって感じで言われて、それからどんどん説教じみてきたから、話す気なくなって終わりました。
今ここの法廷で話したようなことというのは、詳しく児童相談所の人に話しましたか。
- 詳しく言う気になれませんでした。
その児童相談所の人たちは、何をしに来たと思いましたか。
- ただ話を聞きに来て、でも、どうせ園長の味方なんだなと思ってたから、みんな別に何とも思ってない、信用しなかった。
その後、知事への手紙というのを書いたでしょう。
- はい。
あれは、どうして書こうと思ったの。
- 成田さんが面接しに来て、つらかったねと言ってくれたから、いい人だと思って、手紙書きました。
成田さんて、さっき午前中に来た課長のことですか。
- はい。
あなたに、つらかったねと言ってくれたんですか。
- はい
それで、手紙を書いて、返事が来ましたか。
- 来ました。でも、みんな同じで印刷したような感じだったから、みんなもショック受けてました。
どうしてショックだったの
- 同じ文章だったからです。適当に返事書いたって感じが分かったんで。
(甲第六号証を示す)
これが、そのときの返事ですか。
- はい。
みんな同じ文面で来たと。
- はい。
あなたたちが書いた手紙は、一つ一つ内容が逢ったんですね。
- 違いました。
真剣に考えてくれてると思えなかったのかな。
- 思いませんでした。
で、こういう事件があった後、園長先生の態度というのは変わりましたか。
- よくはなりました。
どういうふうによくなったんですか。
- 道具使って殴らなくなったし、血とか見なくなったし。
道具使って殴らなくなったと言ったけれども、素手では殴ったの。
- 殴られました。
あなた自身も殴られてました、その後も。
- はい。
どんなことで殴られました。
- 電話が二個であるんですよ。片一方は使っちゃいけない電話で、使っていいほうの電話で話してたら、キャッチ入っちゃったから、使っちゃいけないはうの電話でしゃべってたら、バンて頭殴られたり。
ほかにはどうですか。
- 幼児さんの面倒見てたら、けっ飛ばされて、出てけって言われました。
そのころに、園長が、みんなの前で謝ったというようなことがありましたか。
- 私はいませんでしたけど、言ってました、周りの子は。
周りの子が園長が謝ったのを聞いてきたという話は聞きましたか。
- はい。
その子たちは、どんなふうにあなたに話してましたか。
- あの謝り方はばかにしてるとしか言えない、と言ってました。
あなたはしなかったんだけれども、子供たちが脱走した。その本当のしてほしかったことは何だったのかな。
- やっぱり、それは、虐待に耐えられなかったし、そうやって問題起こせば、園長先生辞めると思いましたから。
園長に辞めてほしかったということ。
- はい。
結局、園長は辞めないで、そのまま居続けたわけね。
- はい。
それを見たときに、あなたはどういうふうに思ったんですか。
- 包丁とかで足切ったりして傷つけたのに、警察ざたにもならなかったし、園長辞めなかったから、世間でそういうことをしていいと思いました、人傷つけても捕まんないとかと思いました。
それから、さっき、成田課長の話聞いてて、だんだん改善されてきましたというようなことを言ってたね、その後。
- はい。
それを聞いて、あなたはどう思いますか。
- やっぱり、今までやられてきたことがやられてきたことだから、よくなればいいって問題じゃないんですよ。だから、こっちは、辞めてもらうことで脱走とかしたんで、意味がなかったなと思いました。
結局、やられたことがやられたことだったということは、園長がだんだんよくなっていっても、あなたたちの気持ちは済まなかったということ。
- はい、顔を見るのも見るのも嫌だったんで。
あなたは、退園をしたですね、去年の三月か四月に。
- はい。
どんなような事情で、退園したんですか。
- いきなり、朝起きて御飯食べた後に、園長室に呼ばれて、おまえは恩寵園を出ることになったからと言われて、三○分後に出るから用意しろと言われました。
その理由は話されましたか。
- 話されてないけど、反抗とかしてたからだと思います。
で、恩寵園を出されて、どこで暮らすというふうに言われたんですか。
- 取りあえず児童相談所に行けと言われました。
三○分後に、本当に出ていったんですか。
- はい。
荷物なんかどうしたんでしょうか。
- 保母さんたちが勝手に荷物まとめてて。
車か何かで行ったんですか。
- 車で行きました。
児童相談所に行ったら、どうしましたか。
- 違う施設に行くか親のところ行くか、決めろと言われたんで、施設は本当、嫌な思いしかなかったから、親のほうを選んで、親が来ました。
お父さんが迎えに来たんですか。
- はい。
お父さんと、どこへ行きましたか。
- おばさんち。
おばさんというのは、どういう人ですか。
- どういう人って。
あなた本当のおばさん。
- いや、全然、あかの他人です。
お父さんと、どういう関係にあった人。
- よく分かんないんですけど、親の世話してる。
お父さんの世話してる人らしい。
- はい。
そこへ行って、その後、どうしたの。
- 次の日、船橋のぼろい一軒家に連れていかれて、ここで暮らせと言われました。
その船橋の一軒家というのは、だれの家ですか。
- お母さん。
そこにはだれか住んでいたんですか。
- 空き家でした。
あなたが行ったときに、家具とか布団とか、そういうようなものはあったんですか。
- なかったです。布団が一枚ありました。というか、親が持ってきて。
布団だけ持ってきて。
- はい。
で、ここで暮らせって言って、お父さんはどうしたんですか。
- その女の人のうちに帰りました。
お父さんは、今どこに住んでますか。
- 江戸川区、葛飾区、どっちか。そのへん。
その女の人と暮らしてるんですか。
- はい。
あなたは、結局そのぼろの一軒家に一人でいるんですか。
- 一人でいます。
生活費はお父さんがくれてますか。
- くれてません。
どうやって生活しているんですか。
- バイトしてます。
一人で暮らしてたら、いろんなこわいことも起きるんじゃないですか。
- 起きます。
いろんな人が出入りしたりするなんてこともあるのかしら。
- あります。
あなたを今助けてくれる人たちというのもいるんですか。
- います。
どんな人が助けてくれてるの。
- 弁護士さん。
まあ私たちもそうだけど、ほかにも面倒を見てくれる人たちはいませんか。
- ・・・いません。
この原告の浦島さんとかは。
- はい、ここにいる人たち。
今のあなたの気持ちの中で、さっき血を見ると落ち着くなんていう話があったんだけど、今でもそういう気持ちっていうのはあるんですか。
- あります。
どういうときに血を見たくなるの。
- 独りぼっちになったり、いらいらするとき。
今でもやっぱり手首を切ったりしますか。
- いや、手首までは切らないんですけど。
何するの。
- はさみとかでここらへん(左手の甲を示す)とか。
切っちゃうの。
- 切る。
それ、自分でやっていることがわからないの。
- いや、楽しいんです。
それから、大人についてどういうふうに思ってました。あなたは、大人っていうのはどういう人たちだと思ってました。
- 悪魔だと思ってました。
大人になりたいと思いましたか。
- 思いません。
それから、そのほかにもあなたは何か体の中で、恩寵園で暮らしたために、今こんなことが影響残っているなと思うようなことはありませんか。
- けんかとか。
けんかをしがちだというようなこともあるのかな。
- ええ。
それから、人の叫び声というのについて何か言ってたでしょう。
- うん、人の叫び声とか聞くと、立ってられなくなっちゃう。
足の力が抜けちゃうということ。
- はい。
やっぱりそれは、恩寵園でしょっちゅう悲鳴というのを聞いてたということかしら。
- はい。
それから、ほかの恩寵園にいた子供たちで、何か異常な状況になっているという子供のことを聞いたことがありますか。
- はい、三重人格とかになっちゃってる人がいた。
三重人格ってどういうこと。
- 自分がやられてきたことを忘れちゃったり、で、ときに思い出したりしたり、笑ったり、何かおかしくなっちゃう。
男の子、女の子、どっち。
- 女の子。
原告代理人
さっき、子供たちが児童相談所のほうに逃げていったときのきっかけが、保母さんが私たちは耐えられないから辞めるというふうに言ったって言ったよね。
- はい。
保母さんたちが耐えられないから辞めるって言った、その耐えられないというのは、どうしてなの。
- 子供たちが虐待されているのをまあ見てられなかったんじゃないですか。
さっきの話だと、保母さんの中にもおしおきをしている人いたよね。
- はい。
そういう人たちに対しては、あなたはどういうふうに思ってた。
- いや、やっぱり保母さんだから子供を好きじゃないですか。やっぱり子供と園長に挟まれてすごいつらい立場だってわかってたし、私たちは保母さんはいい人だってわかるから、しようがないと思ってました。
保母さんは、園長がいるからそういうことになったというふうに思ってた。
- はい。
すると、園長が今あなたが証言してくれたようないろんなひどいことをしたのは、いつもおしおきっていう形でやってたんですか。
- いや、それだけではないんじゃないですか。
どういうときに。
- やっぱりいじめるのが楽しそうだった。
そうすると、理由もなく突然やることもあった。
- やっぱり・・・、言葉をはっきりしゃべれない子とかいるじゃないですか。そういう子たちを中心にいじめてました。
あなたにとっては、もういじめとしか思えなかった。
- はい。
おしおきという形でやられたこともあるでしょう。
- はい。
で、そういうことでその園長がやったことは、子供がやったことはそういうおしおきを受けてもしょうがないぐらいのことだっていうふうに思った。
- ・・・・・・・。
そんなにひどいことをしたから園長がこういうひどいことをしているんだというふうに思った。
- いや、思いません。
大したことじゃないのに、ひどいことをしているなというふうに思っていた。
- はい。だから、みんな園長先生の視界に入らないようにするんですよ。で、入っちゃったら絶対声かけられるから、見られちゃったらしょうがないというのがある。
もう見られちゃうと何か起きるんですか。
- やっぱり来いと言われて、うん、されますね。
子供たちが逃げるときに、保母さんが子供たちに保母さんのお金をあげたとか、そういうことは聞いたことある。
- いや、そこらへん、詳しいことはわかりません。
私があなたのうちに初めて行ったときに、随分生活も大変そうだし、施設に入ったらというふうに言ったよね。
- はい。
で、あなた、絶対いやだって言ったでしょう。
- はい。
それはどうしてかしら。
- ・・・もうつらかったイメージしかないから、入りたくありませんでした。
今の生活も私から見ていると大変だと思うんだけれども、施設よりはまだましというふうに思っている。
- はい。
原告代理人
小さい子供の部屋、幼児さんの部屋に入っちゃいけないということになっていたんですか。
- はい。
で、それはきょうだいでもそうですか。
- きょうだいでもそうです。
お兄ちゃん、お姉ちゃんが入って園長から何かされたこともあるわけ。
- だから、その幼児さんの部屋に入ってるところを見られたら、だれでも蹴っ飛ばされたりするんで。
お兄さん、お柿さんも、そうでもない人でもそういうことをされる。
- はい。
何でそういう決まりみたいなものを作ったんでしょう。
- いえ、わかりません。
あなた自身は、小さい子供を好きだってさっきも言ってたけれども、やっぱり何回も気になったり、入ったりしたわけ。
- はい。
あなたは、三年前の四月のときにも、小さい子が気になったからとどまったと今言いましたね。
- はい。
将来あなたは保母さんになりたいって聞いたけど、そうですか。
- はい。
もうちょっと詳しく、保母さんになってどんなことをしてみたいの。
- 保母さんになったら、みんなと仲良く遊びたい。で、絶対そういう虐待とか許さない。
許さないっていうのは、そういうことはもちろんしないということだけど、施設とかそういうところに就職したときのことを言っているの。
- うん、そうです。
被告代理人
ちょっと今あなたが話したことで聞きとれなかったことがあるんで聞くんだけど、小さいころ骨折したと言ったね。
- はい。
あのときは、何、だれにどうされて骨折したの。
- おふろ場で遊んでたら、お友達に引っ張られて折れちゃった。
別に園長に引っ張られたとか、そういうことで骨折したんじゃないのね。
- はい。
もう一つ、先程午前中成田さんが証言しているとき、教護院のことについて、成田さんはうそをついていると言ったけど、それはどういう意味。要するに、本人がいやだといったら、本人と家族と話し合って連れていくと言ったことがうそだということ。
- はい。
ということは、無理やりでも連れていくということなの。
- というか、いきなり飛ばされてたから。
その一緒にいた子供たちがね。
- はい。
本人が嫌がっても、無理やり連れていかれてたということだった。
- いや、そこの場面は見てませんよ。ただ、いきなり飛ばされてたから。
それで、君がこの園を出るとき、急に話が決まったみたいだけど、先程の話だと、児童相談所に行って、そのときお父さんも一緒にいたのかな。
- (うなずく)
それで、どこかほかの施設に行くという話も出たわけ。
- はい。
ほかの施設というのは、具体的にどこかあったの。わからない。
- いこいのもり。
生実学校じゃなくて。
- ああ、生実もありましたよ、話の中で。
幾つかあって、どこかに行くかという話も出たわけね。
- はい。
生実学校には見学に行ったことはあるよね。
- あります。
どうだった、生実学校の様子は。
- 入りたくなかった。
どうして。何か厳しそうだったからということ。
- うん。
この恩寵園よりも厳しそうだったということなの。
- というか、生実学校は教養院じゃないですか。普通の施設であそこまでやられたから、教護院はもっとすごいやられるというイメージがあったから。
じゃあ、一応生実学校の具体的に何かを嫌いというんじゃなくて、そういう厳しいところには行きたくないという考えだったと。
- はい。
この恩寵園も、あなた、いろいろやられたことはあるんで、園長が嫌いだということみたいだね。園長先生、嫌いなんでしょう。
- 嫌いです。
この人がいなけりゃまあそんなに悪くはないところだったの。
- まあ少なくとも。あの人いなかったら。
まずここを出たとき、去年の三月に出たよね。
- うん。
本当は出たくなかったの。
- いや、ここで頭張ろうって気持ちはありましたよ。高校三年間行って。
出ると高校行けるかどうかわからなくなるからということ。
- はい。
ところが、園長さんなりあるいはその児童相談所に行ったときに、そういうことを言ったの。高校を出るまでいたいんだということ。
- いえ、覚えてません。
あなたがそう言ったかどうか覚えてないということ。
- はい、覚えてないです。
そこで、いや、もっといたいんだと言えばいられたかもしれないとは思わない。わからない。
- いや、正直いたいと思ったんですよ。だけど、今まであんなことされてきて、こっちもいたいって言うの悔しかったから、言えませんでした。
まあ本当は高校を出るためにいたかったんだけどということなのかな。
- うん。
それで、ここを出て自宅に行って、それで高校はいつやめたの。
- 高校二年生。
何月ごろ。高校二年になったころ出たんだよね。
- はい。
で、何学期ごろまでいたの。
- いや、覚えてません。
出てから間もなく。
- うん、あまり行きませんでした。
行けなかったから。
- (うなずく)
あまり行ってなかったっていうのは、いつごろから行ってなかったということ。
- ・・・・・・。
恩寵園にいたころは、ちゃんと行ってたの。
- いや、サボってたときもありました。
いや、サボったときはたまにはあるだろうけれども、でもずっと行くつもりでいたんでしょう。
- はい。
でも、割と通学しないことも多かったわけ、恩寵園のころも。
- ああ、ありました。
何て高校に通ってたんだっけ。
- ○○高校
そこでは、服装とか髪とか、そういうの、割と厳しく言われるんでしょう。
- 言われます。
いろいろ服装のことなんかで学校で注意されたことなかった。
- ありました。
そんな服装じゃ学校来てもだめだから、帰らされたこともあるわけでしょう。
- はい。
それで改めて学校に行こうとはしなかったの。
- いえ、ちゃんとスカート伸ばして、黒染めもらってやって行きましたよ。
髪を黒くして行った。
- はい。
一年のころはどのぐらい休んだか、あるいは学校に行ったか、大体わかる。大体でいいけど。
- いや、高一のころはちゃんと行ってましたよ。
いや、今サボったこともあると言ったから聞いたんだけどね。
- いえ、そんな。
高校一年のころはずっと行ってたの。
- 行ってました。
サボってたわけじゃないの。
- サボったときもありました。
たまにある程度。
- はい。
そして、園を出てからはもう行かなくなったわけ。
- うん、たまにしか行かなくなった。
それはどうして。せっかく高校を出て保母さんになろうというんだったら、頭張らなきゃいけないわけでしょう。
- いや、環境が全然変わっちゃって、もう自分自身がどういう状態になっているのか全然わからなくて、学校どころじゃなかったんです。
生活もしなきゃいけないしね。
- はい。
あなた、今バスケットが好きだったということだったね。
- はい。
それで、中三までクラブ活動やってたわけ。
- はい。
で、クラブ活動というのは、あるところまでいくとやめなきゃいけないね。
- はい。
そこまでずっといたの。
- いました。
いや、園長からクラブ活動させてもらえないとか、やめろと言われたようなことを言ったみたいだけど、言われただけで、実際はクラブ活動できたわけね。
- いや、私の顧問の先生が園長に頭下げて頼んでやらせてもらってました。
園長はやめさせようとしたけど、クラブの顧問の先生が頼んでくれたと。そういうことで一応最後までやれたわけね。
- はい。
あと、園にいるころだけど、君の友達が君を訪ねて夜来たとか、あるいは君と一緒に来たとか、そういうことはよくあった。
- ありました。
そういうとき、保母さんとか園長さんが、友達は入れちゃいけないとか、そういうことは言われなかった。
- 言われました。
それは決まりなの。入れちゃいけないというのは。
- はい。
そういうふうにあなたが友達連れてくるというのは、それは何時ごろの話なの。
- いえ、夜中。
中へ入れちゃいけないと言われたわけね。
- (うなずく)
すると、園にいるころは、君は外泊なんかはしたことない。
- あります。
そのときはどういうところへ泊まったの。まあ言いたくなけりゃ言わなくていいけど、言えるんだったら言ってもらいたいんだけど。
- 外です。
友達のところに泊まり歩いたということ。
- 外でみんなでしゃべってました。
特に泊まるってことではなくて、外でね。
- はい。
今君が住んでいるところというのは、ずっと空き家だったんで、かなり汚れているということみたいだね。
- はい。
掃除しても追いつかないぐらい汚れているみたいだね。
- はい。
園にいるころは、もちろん部屋だとかそういうところは自分たちで掃除したんでしょう。
- してました。
それはそういう決まりだからね。
- はい。
もう自分が今住んでいるところは、とても掃除できるような状態じゃないの。
- いや、もう家自体が古いんで、壁が崩れてきたりするから、意味ないです。
あと、園を出た後、児童相談所の担当の人とか、そういう人があなたに会いに来ることはないですか。
- あります。
毎月来ているわけ。
- いや、そこまで。たまに。
四月は、何か君の都合で会えなかったということがあったね。
- はい。
それで間違いないの。
- はい。
三月は来てくれた。
- 三月は会いました。
それで、その人とはどういう話をするわけ。
- 元気でやっている、とか、ああいう普通の。
君、学校やめるとき、だれか相談する人いなかったの。
- 覚えてません。
いつの間にかずるずるとやめたということになるわけ。
- はい。
原告代理人
園を出てから、園まで遊びに行ったことというのはあるんですね。
- あります。
敷地の中まで入ったことは。
- 内緒で入ったことはあります。
建物の中はない。
- ないです。
園長夫人に会ったことはありますか。
- あります。
何か言われたことない。
- えっ、何でいるの、早く帰りなさい、入っちゃだめ、って言われました。
それから。
- ・・・・・・。
園長夫人から何かほかに言われたことない。
- ・・・いえ、外見のことを言われて。
理由についてどうこうとかって言われたことないですか。
- ・・・・・・。
追い出された理由とかということで言われたことない。
- ああ、あります。
どんなことを言われたの。
- 自分が追い出された理由わかっているの、って感じで。
自分の追い出された理由わかってるの、って聞かれたのね。
- はい。
原告代理人
さっき骨折のことが出たんだけれども、あなたは、骨折、園長からさせられたわけじゃないけれど、二人ぐらい園長から骨折させられた人いたね。
- 一人だけ覚えてます。
一人はどんな子だった。
- 女の子なんですけど、その人は中学生のころ脱走して見つかっちゃって、で、保護室に連れてこられて竹刀か何かでぼこぼこにやられてて、で、それは見たんですよ。で、その後また朝脱走して、で、三日問かかってずっと埼玉のほうに歩いて帰ったんですよ。で、親に言って病院へ連れていってもらったら骨折してたっていう、聞きました。
もう一人、男の子で覚えてない。
- ソフトボールの練習しているときに、体が固い人がいたんですよ。で、柔軟体操あるじゃないですか。それで園長先生が乗っかって折れちゃった。
無理に柔軟体操させようとしたの。
- うん。
どういう状況で乗ったか覚えてます。
- いや、体から。
乗って、それで骨がどこが折れたの。
- 腕。
腕の骨が折れちゃったの。
- はい。
原告代理人
あなた、結局お父さんに引き取られた形になっているんだけれども、お父さんからはあなたに対して何か説明があった。引き取ることになった経緯とか理由とか。
- お父さんに・・・。
お父さんに引き取られたでしょう。
- はい。
で、お父さんは、あなたに帰ってきてほしかったんだよとか、そういう説明をしてくれたの。
- いえ、してくれてません。
何でお父さんは引き取ることになったっていうことは、あなたはわかってないの。
- しょうがなく。
それは、お父さんがそう言ったの。
- はい。
しょぅがないから引き取ったんだよって。
- いえ、自分でそう思いました。やっぱり私を施設に入れたじゃないですか。で、何かお前がいると世間にそういう目で見られるから、邪魔だから死んでくれって言われました。
邪魔だから何。
- 死んでくれって言われました。
それは、恩寵園から出てから。
- はい。
じゃあ、お父さんは、あなたを積極的に引き取るつもりではなかったわけね。
- はい。
裁判長
今まで話してもらったことの中で三つほど聞きます。一つは、あなたは中三の部活が終わった後反抗的になったという話をしたところで、恩寵園にいる子の中で、児童相談所に行きたいという子がいたと、こういう話があったんだけれども、それはどういうことなのかな。児童相談所に行きたいということを言ってた子がいたというのは、どういう意味。
- だから、私の友達が児童相談所に行って相談をしたいみたいなことを言ってて、多分虐待のことだと思うんですよ。
行きたいという話を聞いたけれども、児童相談所に行って何を相談したいのかとか、どういうことをしたいのかということについては、具体的な話としては聞いてない。
- 聞いてないです。
二歳から一六歳まで恩寵園で過ごしてきたということだけれども、それで先程園長からのいろんな行動について、あなたが覚えていること、直接経験したこと等について話があったけれども、そういう場面、場面で保母さんとか園長以外の職員の人が、そういう園長の行為、行動を制止したり、やめなさいと言ったり、あるいは言葉で言わなくても、中に入ってそういういろんな暴行等を受けることがないようにかばってくれるようなことはなかったの。
- ありました。
それはどういう人たちがかばってくれたのかな。
- 保母さん。
特定の方、あるいは。
- 特定ですね。
すると、先程ここで話をされたことからすると、あなたたちがほかの子がやられているときに気がつくように、職員の人たちも気がづくと思うんだけれども、職員の人たち、保母さんたちは、園長さんのそういう行動について、何か具体的な態度というのかな、あなたの印象に残るものとしてはない。
- 保母さんにやられたこと。
いや、園長さんがいろいろなことをやったと。
- うん。
あなたもやられたし、ほかの子供たちもやられたというときに、中に入ってくれる特定の保母さんたちもいたという話はあるけれども。
- はい。
そういう職員の人たちの問に、見て見ぬ振りをするような方々もおられたの。
- ・・・・・・。
あなたの印象でいいんだけどね。
- ああ、いました。
(甲第五号証の一〜九を示す)
五号証の一、これは○○さんが書いたやつね。
- はい。
で、これは知事への手紙という印刷された文字が記載されて、これとその次、五号証の二という番号のものから五号証の三までは知事への手紙という題のついた紙に書かれているんだけれども、この紙はどうしたんですか。だれからもらったの。
- 保母さん。
保母さんがくれたの。
- はい。
で、これに書きなさいと。
- うん。
どういうふうに言ってくれたの。
- 自分のつらかったこととか、助けてもらいたいことを書きなさいって。
それで、あなたは書いて保母さんに渡したと。
- はい。
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