- 原告代理人
証人は、いつから県にお勤めですか。
- 勤め始めたのは、昭和四八年からです。
児童家庭課長は、いつからいつまで。
- 平成八年の四月一日から平成一〇年の三月三一日までです。
平成八年の四月一日ですか。
- はい、そうです。
その前は。
- その前は、企画課というところにおりました。
部は何部でしたでしょうか。
- 企画部です。企画部企画課。
児童家庭課は、何部でしたっけ。
- 社会部です。
甲第二号証を示す
これは所長会の報告というふうにとりあえず言っておきますけれども、これはご存じですね。
- ええ、見たことがあります。
このときにはまだ課長の地位にはおられなかったということになりますね。
- はい、前任です。
前任の課長は、お名前はどなたですか。
- 杉田さんです。
ところで、あなたは児童家庭課長をお務めの立場として、その当時、養護施設において体罰が禁止されているということはご存じでしたね。
- はい。
今示した甲二号証の中に、園長による体罰が行われていたということが書かれてありますが、平成八年四月一日に課長になられたときにも、この調査結果はご存じでしたね。
- ええ、前任者から引継ぎがありましたので、その中で知りました。
この四月一日という時期は、子供たちが児童相談所に助けを求めて駆け込んだという時期のちょっと前ということになりますか。
- そうですね。三日ですので。
その前の引継ぎというのは、いつ受けましたか。
- 四月一日です。
この報告書は、いつごらんになりましたか。
- いつ見たかは覚えてませんけど、まあ大体その後すぐぐらいには。
その後、四月三日より前ですか。
- 四月三日より前ではないかもしれない。ちょっと覚えてないですね。
そうしますと、別な聞き方をしますが、恩寵園で施設長、園長による体罰が行われているということを知ったのはいつですか。
- 引継ぎの懸案の中に入ってましたので、恩寵園で体罰があって、いろいろ指導しているというのは引継ぎの中に入ってました。
じゃあ、一日には知ったということですね。
- はい、そうですね。
四月三日に、その子供たちのことについて具体的にどういうふうにだれからの報告で知ったわけですか。
- 各措置児相がありますので、どなたということはあれですが、措置児相、例えば中央児童相談所であるとか、市川児童相談所、柏児童相談所、あるいは千葉市の児童相談所、銚子児童相談所が大体そうですね。そこからそれぞれ報告がありました。
どういう報告があったわけですか。
- 子供が来たということと、それから園長とほぼさんがれんかをして保母さんが辞めることになってしまったので、辞めさせないでほしいというようなことです。
今のは、各措置児相の所長からの報告ですか。
- 所長というか、具体的に所長の場合もありますし、次長の場合もありますし、それは各児童相談所のそれぞれの事情がありますので、所長と言われるとちょっと断言はできないです。
そのような形で知ったのと、その前後と言われましたけれども、その甲二号証、前年一〇月の所長会の報告、これを読んで、どうして子供たちがそういう行動に出たんだというふうに思いつきました。
- いえ、それは子供たちが言ってることですので、園長と職員が意見が合わないということで、まあ交通費なんかは子供は保母さんからもらってきたわけなんで、聞きましたら、そういうことの中で、辞めさせないために子供たちが言いに来たというふうに理解しています.
子供たちが言っていることだというのは、何のことですか。体罰のことです
- 体罰じゃありません。今回その児童相談所に来た理由についてです。
児童相談所に来た理由と、この甲二号証の報告書、これは関係ないと思ったわけですか。
- 関係ないっていうか、まあその園で起こっていることですから、まるっきり関係ないこととは思いませんが、その児童相談所に子供が来たという原因については、子供たちが言っていることですので、そのとおりであるというふうに。
だからその原因というのは何なんですか。体罰ではないんですか。
- 体罰ではなくて、さっき言ったように、子どもの言葉で言えば、園長と職員がけんかをして、それで保母さんが辞めざるを得なくなったので、それを何とか辞めないようにしてはしいということです。
子供がけんかと言ったんですか。
- けんかというか、まあ意見が合わないというか、けんか腰に。
けんかというのは、あなたの考えではないんですか。
- いや、そんなことはありません。客観的にそういう。
だから、子供がけんかって言ったのかということについては、そうでないとおっしゃるのでね。
- けんかというその言葉自体がどうであったかというのは、私は直接聞きませんのであれですけれども、報告は、少なくとも園長と職員が意見が合わないということでありました。
合わないその背景にあることについては、その三日に報告聞いたときにはまだわからなかったとおっしゃるわけですか。
- ええ、すぐにはわかりませんが、その後、うちの職員も園のほうに行って職員に話を聞きましたし、それから園長のほうからも話を聞きましたので、事情はいろいろ聞きました。その三日に子供が来たときにすぐにわかったかどうかということについては。
それでは、三日に来た後、その後、最終的には子供は施設に戻りましたけれども、戻るまでの間に、園に帰りたくないと言った子供もかなりいたんじゃないですか。
- いえ、まあそれは時期時期でちょっと違うんですが、少なくとも子供が児童相談・・・。
まあ三日のことを聞いているんじゃないです。
- 三日に来た子供は、四日の日に帰りたいと言ったわけなんで、迎えに行くように保母さんたちに言ったんですが、保母が拒否したので三日の日には迎えに行けなかったということです。
甲第三号証の一〜一七を示す
新聞記事ですが、この三号証の一から一七までありますね。
- はい。
これはごらんになってますか。
- ええ、見てます。
今日の前にね。あるいはその当時ごらんになっているんですか。
- その当時見ました。各新聞社の記事ですけどね。はい。
子供が園長の体罰があるから帰りたくないと、そう言った子供がいるかいないか、今もう一度返事をお聞きしたいんですが。
- 初めのときと。
三日の後のことです。戻るまでの問に、その途中の過程でそういう子供がいたかいないかを今もう一度端的に答えてください。
- 後半の方で戻りたくないと言った子供はいます。
いますね。新聞記事にもそのことは出ていますね。
- 当初の記事にはそう書いてないと思いますが。
当初というのは、今私は、その四月の記事をたくさん踏まえて申し上げている。
- 一番最初に出たのは、朝日新聞の四月一〇日の記事でして、一〇日の朝刊に出まして、その後その朝刊を見た記者たちから随分電話をいただいて、それによって各新聞社が書いてくると。
で、園長の体罰があるから帰りたくないと言った子供から、どういうことがあって帰りたくないのかというのは、だれが聴取しているんですか。各児相ですか。
- 各児童相談所ですね。
その内容と、先程申し上げている甲二号証の報告書の中身というのは、つながるわけでしょう。
- あの・・・。
ちょっと話を散らばさないでください。
- ええ。
子供が、施設長、園長の体罰があるから帰りたくないと言っていることと、この報告書の中身、これについては、関連、つながりがあるわけでしょう。
- まあそれはつながりがあると思います。
ところで、この四月の初めの時点では、県の認識としては、あるいはあなたの認識でもいいし、引継ぎを受けた前任者の認識でもいいですが、恩寵園の中の園長による体罰というのは、もう問題は解消しているというふうな認識だったんですか。
- その時点で、体罰のことについてはないという引継ぎでした。ただ、問題があるかどうかということについては、引き続き注視というか、注意してほしいというのが前任者の引継ぎでした。
なくなってるというのは、いつを最後になくなってるというんですか。
- いつというのは聞かないですが、その四月の時点の話として、現在はもうないということでした。
甲二号証は、一〇月一二日に出ているわけですけれども。
- (うなずく)
そこにどんな体罰があったというふうに書いてあったか、いかがですか。
- ちょっとその報告書自体に書いてあったことを一言一句覚えているわけではありませんが。
それではこうお聞きします。あなたが引継ぎとして、恩寵園にどういうことがあったのか、恩寵園の園長による体罰としてどんなことが行われていたのか、それについてはどういう引継ぎを受けていますか。
- その前年度の七年度の八月かと思うんですが、匿名の通報があって、その中で、ティッシュに火をつけたとか、その暴力を振るったとか、そういうような匿名の電話があったので、それに基づいて調査も行ったし、改善策というか、対応を行ってきたということでした。
報告書にはあんまり詳しく細かいのは出てないんですが、例えばそのほかに、今幾つか言われた以外にどんなことが過去長い間、長期間にわたって行われていたか、それについてはどういう引継ぎを受けて、どういう認識を持っておられたんでしょうかね。
- 体罰の個々のことについては、細かい一つ一つについて引継ぎを受けたわけではありません。
例えば、麻袋に入れて木の技につるしたということはどうですか。
- 後のそのいろいろというか、何かの書類の中でそういう表現があったのは覚えてますけれども、それについて確認したかどうかということはわからないです。
乾燥機の中に子供を入れたというようなことはどうですか。
- それは初めて聞きました。
今初めてということですか。
- あらかじめその書類は見させていただいたので、その中に書いてあるのは知ってますが、在職当時、その話は聞いたことがありません。
それから、包丁を足に押し付けて切ったということはどうですか。
- ああ、それに類する話は聞きました。
そういうような、今全部思い出せるわけじゃないと思いますけれども、体罰というのは、一体いつごろからあったというふうに引継ぎを受けてますか。若しくは、四月ごろ認識を持っていたんですか。
- いつからというのはちょっとわからないです。
例えば半年、一年のことなのか、もう一〇年以上にもなるのか。
- ううん、期間の話は出なかったので。
出なかったって、一体どのくらいその根強い、報告書にも書いてありますけれども、体罰肯定の姿勢があるということに関係あるんじゃないですか、そういう期間というのは。
- 体罰肯定というふうにおっしゃるんですが、そういうふうには書いてないと思いますが。
どう書いてあったんでしたっけ。
- そこの報告書の中に書いてあると思うんですが、そのしつけについての枠組みというような中でまあ本人は思ってたということせあって。
甲第二号証を示す
体罰肯定の姿勢というのが最後のページに書いてあるんじゃないですか。
- そこのことを言っているのではなくてですね。
どういう意味ですか。体罰肯定の姿勢があるというのは、県の見解だったんではないですか。
- 体罰については、その前ページに書いてございますが、その園長の信念ということで言えば、しつけについてのこういうふうにしつけなくちゃいけないという枠組みみたいな信念があって、そしてまあ結果として子供の自由度が制限されたことが体罰につながったということが書かれているわけでして、体罰に至るその一連のメカニズムについて言っているわけですから、そういうことについて是正されなければならないということだと私は理解しておりますけれども。
それが体罰肯定の姿勢ということじゃないですか。
- 言葉の一端一端を掲げるとそういう話にはなるかもしれませんが、これは、報告書というのは行政の内部資料として作ったわけですから、こちらが今後どういう対応をすればいいかというのがわかればいいわけですから、外に出したり、外の人が見て誤解を与えるとか、そういうようなことの観点で書かれているわけではないんですね。したがって、言葉の一つ一つを取り上げておっしゃればそういうふうになるのかもしれませんが、それはもう体罰を肯定しているということは全くありませんので、体罰がないような体制とか、そういう指導が行われるように対応していくということをしなくちゃいけないということです。
今の私のお尋ねは、体罰肯定ということが書いてないとおっしゃるから、書いてあるでしょうとお見せしたんですよ。ところが、今のあなたのお答えは、そもそも体罰肯定なんかはしてなかったと。園長は体罰は肯定してなかったと、そこまでおっしゃるわけですか。
- (うなずく)園長に、まあ確かに体罰ということになってしまったのは、そういう事実はあったかもしれないけれども、自分はそれをやりたいとか、そういうことでやっているわけじゃなくて、非常に反省しているということですので、肯定しているということではありません。
裁判長
甲第二号証を示す
途中ですが、一番最終ページの3の(1)、そこに今後の対策についてということで、体罰肯定の姿勢について、是正する必要があるという、この文言については証人はご存じですか。
- ええ、読んでますので知ってますけれども。
それと今の証言されたこととの内容は、どういうふうにかかわるんですか。
- ですから、言葉の一端一端をくっつければそういう話になるのかもしれませんけれども、この報告書自体、外に向かって出すわけじゃなくて、今後の行政内部の対応についてどう考えたらいいかということを検討するために作られたものですから、趣旨としては、その園長が体罰を肯定しているということを言っているわけではないということです。
原告代理人
この報告書が出た後に、県としては、園長の体罰について反省を求めるために何かしたようでしょうか。どういう引継ぎを受けていますか。
- 直接児童家庭課のほうに呼んで課長自ら指導したということとか、それから、園全体の態勢を整える必要があるということでカンファレンスチームを派遣したとか。
話を広げなくていいです。園長に対して反省を求めるためにということを限定でいいですから、そういうことですか。
- ええ、そういうことです。
園長が指導の中で体罰があったということは認めたんですね。
- はい、そうです。
顛末書というものを書かせたことはありますか。
- はい。
どういう内容のことが書かれてきたんですか。私ども、中身を拝見していませんので、どんなことを書いてきたんですか。
- 何回かありますね。
顛末書というのは、一通ではない。
- はい。
何通。
- ・・・そうですね、前年度では一回なんじゃないかと思います。
引継書の書類の中でいいですよ。一通。
- ええ。
県の準備書面でも、一二月に一回あったようなんですが、そのあなたが引継ぎでごらんになった顛末書の中には何が書いてあったですか。
- ・・・ちょっと今覚えがなくて申し訳ないですが。
ちょっと一般的に聞きますけれども、顛末書というのは、どういう意味の言葉になりますかね。
- まあ経過を書いてあるということの理解ですね。
責任を認めるとか、そういうものではないですね。
- まあ触れる場合もあると思いますけれども。
それには触れてあったですか。
- ・・・ちょっとすみません。
普通、始末書とかいうことになれば、責任を認めて申し訳ないということになりますね。
- ええ。
顛末書というのは、組織の中では基本的には経過を書く文書ですよね。
- ええ、まあそうですね。
一〇月のこの報告書の後、これに基づいてあなたの前任者というのは、園長に対しては、体罰についてどういう点を反省してもらおうとか、どういう点がまだ考えが足りないんじゃないかとか、こういう指導はしてるんですか。
- ええ、しています。していますが、個々に引継ぎの中で言葉としてどういうふうに言ったかとか、そういう話はわからないですね。
普通なら、始末書なんかで済むことではないんじゃないですか。
- それはまあ前任がやったことですので、私は何とも言えません。
じゃあ、あなたはその四月の段階で、子供たちが戻った経過についてはさっきちょっとお聞きしましたけれども、戻る経過の中で、園長が子供に謝罪するということになった、これはご存じですね。
- はい。
これは、県や児相も一緒に園長と相談したことですか。
- そうですね。
何で謝罪をさせたんですか。
- 体罰について謝るということですので、何でって言われても、まあ体罰という、それについて謝るということですね。
謝る必要があるというふうに県も判断したんでしょう。
- ええ、そういうことですね。
平成一〇年一一月二六日付け被告準備書面を示す
この経過表が付いていますが、これについてはごらんになってますね。
- そうですね。まあ一つ一つ見てないんですが、こういうのが出されているのは知っています。
これは、県の職員の方が基本的に作られたんでしょうね。
- そうです。
最終的にはもちろん訴訟代理人が作られた、訴訟というか、弁護士さんのあれですけれどもね。
- ええ、そうだと思います。
県の職員がこの中身を作るについて、あなたとの相談はなかったですか。
- 職を離れてますので、ありません。それを出したときは、私は証人になることになってたんでしょうか。
これは去年の一一月の提出ですから、あなたが職を離れた後であることは確かなんですが。
- ええ、それと証人になるかどうかもまだ決まってないし、職を離れてますので。
いや、証人ということでじゃなくて、当時の県の対応を整理して思い出したりするのに、あなたはこれには関与してないですか。
- ええ、関与してないです。
この中には謝罪ということが入ってないんですが、謝罪というのは、そのときあなたとしては、これは謝罪させないと子供が帰らないと、こういうことも考えたんじゃないですか。イエス・ノーでいいですよ。
- それは、そういう質問だとノーすね。
じゃあ、何でそれ必要だったんですか。
- まあ園長が悪いということでしたので、やはりその面については謝らせるべきだと。
それから、もう一つは、直接処遇から外れるということもこのときに決めたんじゃないですか。
- はい。直接処遇のことについては、前の年度もそういう体制であったと思います。ただ、明確にそういう話になったのは四月以降、四月のその話合いがいろいろされた後からだと思います。
原告代理人
あなたは、平成八年四月三日に子供たちが児童相談所に駆け込んだ理由は、園長と職員の意見が合わないと。で、保母を辞めさせないために逃走したと、そういうふうにおっしゃいましたね。
- はい、そうです。
本当にそういう認識だったんでしょうか。
- ええ、子供から聞いたところによると、何で来たかというと、まあそういう理由なんですが、保母さんから交通費をもらって、訴えてくれというような話があったので来たということです。
甲第五号証の一〜九を示す
そうしたら、甲五号証、それは直後の子供たちが千葉県知事にあてた手紙ですね。
- はい。
これは、あなた、見てますね。
- はい、その当時見ました。
その中に、じやあ職員と保母が対立しているから、保母を辞めさせないでくださいと。そういうことを書いてある部分はありますか。
- まあ確認してませんけど、手紙に基づいて私は言っているんじゃなくて、その児童相談所に来た当初、子供が何と言ってたかということに基づいてお話ししてます。
じゃあ、そういうものがあったら出せますか。あなたの言う職員と保母の対立で子供たちが児童相談所へ駆け込んだということなら、子供たちがそういうことを書いたものはありますか。
- あります。
じゃあ、出してください。
- いや、それはちょっと。
じゃあ、例えばその甲五号証の中で何通か子供たちの手紙が出ているけれども、その子供たちの手紙の中に一つでも、職員と園長が対立してて自分たちは苦しいと。職員を辞めさせないでくれというのが一つでもあってもよさそうじゃないですか。
- はい。
ないでしょう。
- はい。不思議なことだと私も思います。
で、あなたの認識は、もう一度聞きますけど、園長の体罰がいやで子供たちが児相へ駆け込んだという認識ではなくて。
- はい。
職員と園長が対立して、保母が辞めるというので逃走したと、そういう認識ですか。
- はい、そうです。
で、子供たちは、平成八年の四月三日から五日の間に一三名逃走したんですね。
- そうです。
一三名逃走した。
- はい。
で、あなたは、みんな帰りたがったと、こう言いましたね。
- はい。
帰りたがった理由の一つは、学校があるからということが一つはありませんか。
- ああ、それはあると思います。
だけど、園長がいるから、園長がこわいからいやだと言って帰りたくないという子供もいたんじゃないですか。
- 当初聞いたときは、それだけ言ったら帰るということでしたので、当初はそういう話だったんです。
じゃあ、市川児相に逃げた子供たちはどうだったんですか。全員帰るのいやだと言ったでしょう。
- いえ、そういうことはありません。最後まで残ってたのは確か四人だとは思いますが、四人だけじゃありませんでしたので、市川児相、個々の児童相談所が何人ずつだったかというのはちょっと今は思い出せませんが、最後まで残ったのは確か四人で、で、その最後の日まで残ってたのは三人じゃないかと思いますが、もっと複数人数いました。
じゃあ、最終的に全員が帰ったのはいつですか。
- 二三日です。
あなたたちは、子供たちを四月一〇日に帰す予定だったんでしょう。
- そうです。
だけど、二三日まで延びたじゃないですか。
- はい。
それは、子供たちが帰るのを嫌がったからじゃないですか。
- 初めは、さっきもちょっと触れましたけれども、三日から五日まで分散的に児童相談所のほうに来ましたので、三日に来た子供は四日の日に帰りたいということが確認できたので、保母さんに迎えに行くようにということで指示したんですけれども、保母さん自身が拒否したと。で、その後、また園の中で保母さんとか職員と園長とそれから児童相談所と児童家庭課の職員が話をして、九日の日には全員迎えに行くという話で合意できたんです。そうしましたら、翌日の一〇日の朝日新聞の朝刊に記事が登載されまして、その日は報道機関の対応に追われてしまいまして、迎えに行ける状態じゃなかったんですね。それで、それ以降になってまた再度確認しながら迎えに行ったということなんで、まあ最終的にそういうふうになってしまったこともあると思います。
そうすると、マスコミの責任もあるわけ。
- 一端はあると思って私は、まあ責任という言葉はともかくとして、タイミングとしてそういう状況であったということです。
中央児相にに前田さんという人がいますね。
- はい。
前田さんが、このままだと県は黙っていませんよという形で子供を脅かして帰したといいうことはありませんか。
- そういうことはないです。
ないんですか。
- 前田さんは子供の意見を聞いて。
いや、あるのかないのか、結論、答えだけ言ってください。
- ないです。
五月一日に子供たちが知事に手紙を出しましたね。
- はい。
その返事がありますね。
- (うなずく)
甲第六号証を示す
この字は、だれの字ですか。知事の字ですか。
- 知事ではありません。
だれの字ですか。
- だれかというのはちょっとわかりませんが、まあ広報課のこれをしている担当だと思います。
児童家庭課の人間の字ですか。
- 違います。
そこに沼田武と墨字で書いてあるのは、それは知事が墨で書いた字ですか。代筆ですか。
- そこはちょっと担当外なのでわかりません。この知事の手紙自体は広報課のほうの担当なので、こういう手紙が来ているとか、そういう状況はどうかという話は聞かれますが、対応は別の課でしております。
沼田知事は、子供たちの手紙を本当に見ているんですか。
- 子供の手紙のことは知事に広報課長が説明に行ってますので、見ております。
じゃあ、知事は、子供たちがこんなことをして集団脱走して大変な事件だと。関係者に対して知事から直接の指示とかそういうものはなかったんですか。
- もちろんきちんとした対応という指示はありました。
関係者の処分もなかったの。例えば行政上の処分だとか、そういうのもなかったんですか。
- 関係者の処分はありません。
ないですか。
- 県庁の職員という意味ですか。
そうです。
- ないです。
知事から、こうしろというような話もなかったんですか。
- 今言ったように、きちんとした対応をするようにという指示はありました。
沼田知事がそう言ったわけですか。
- そうです。
平成一〇年一一月二六日付け被告準備書面を示す
添付の表の一番右上に、平成七年一〇月二日に報告書が出ていると、これは知ってますね。先程の報告書。
- はい、先程のですね。
この中には、園長が刃物で脅かしたという報告がありますね。
- ああ、はい。
大変なことですよね。
- (うなずく)
証人もそう思いますでしょう。
- はい。
そこで、その次の下のほうの段を見ると、平成七年一二月一八日に児童家庭課長による園長の指導というのが書いてありますね。
- はい。
これは、あなたが先程証言なされた杉田課長ということですか。
- そうです。
で、その下に、平成八年三月二六日日に児童家庭課長による園長の指導というのがまたありますね。
- はい。
で、平成七年一二月一八日の児童家庭課長による園長の指導のところの右側のほうに、園長が体罰があったことを認めた、体罰を行わないことを指導した、こう書いてありますね。
- はい。
この平成七年一二月一八日から平成八年三月二六日の問に、子供たちに対して園長が暴力を振るったということについては報告を受けていますか。
- ・・・その問、ちょっとわからないですね。
じゃあ、私から具体的に聞きますけど、子供たちを殴ったとか、幼児が座るいすを、座るときにいすを引いて子供を転倒させて頑を打たせただとか、そういう報告は聞いたことないですか。
- いすを引いてとか、そういうのは聞かないですね。
そうしたら、その表を見てください。平成八年三月二六日に児童家庭課長による園長の指導がありましたね。
- はい。
それにもかかわらず、子供たちは逃走しましたね。
- ええ。
その表を見れば、平成八年の四月に逃走しましたね。
- はい。
これは、全然何の指導の効果もないという認識はなかったんですか。
- まあ確かに園長と保母さんたちが意見が合わなかったり、そういうふうなことで辞表を出さなくちゃいけないという事態は望ましいことではないし、本来児童の保護というのは、その職員の連係とかそういう中で行われるべきですから、そういう意味では態勢というのは整ってないし、連係も図られてないなということはそのとおりです。
そうすると、平成八年四月までの一連の流れ、逃走の問題は、あなたの認識としては、体罰の問題ではなくて、突然職員と園長との対立の問題だと、そういう認識なんですか。
- いえ、突然というわけではないと思います。まあ後から事情を聴取した中で聞いたわけですけれども、その前からそ部屋割りの問題で、特に労働時間の問題なんかがあって、少し集約した形でその担当も変えたいというような形で、その部屋割りをどうするかという問題についてはもう二月ごろから話をしていたということで、ただ具体的にだれがどの部屋を担当するかどうかというのは園長が四月に発表するわけですので、そういう中で意見が合わなかったということで、その部屋割りを変えるということ、つまり各年齢層をその部屋ごとに例えば縦割り・・・。
まあそれは、部屋割りの問題だとかそれから対立の問題だとか、そんなものはあったのかもしれないけれども、一番大きな問題は、園長が体罰を振るってそういう管理体制を敷いてたということがこの園の問題だったんじゃないんですか。
- 体罰が行われるというのは、そういうことはあってはいけないわけですが、体制としてそういう体制は是正していかなくちゃいけないと思います。
そういう問題がこの園にあったということは事実なんでしょう。
- そうです。
その延長線上に平成八年四月の逃走の問題があったということも事実でしょう。
- まあそういうことですね。はい。
じゃあ、その表の二枚め、この表には書いてないんですが、平成八年八月三〇日にあなたが恩寵園に行ったということは覚えてませんか。
- ああ、よく覚えてます。
そこであなたは職員に、園長が辞めなくても最終的には仕方ないわねと発言したことはありませんか。
- 園長を辞めさせる権限がないという話はしました。
で、具体的に、例えばこの間この平成八年八月三〇日までいろんなことありましけど、例えば勧告を出そうだとか、命令を出そうだとか、そういうことは全然検討しなかったんですか。
- ええ、勧告とか命令とか、児童福祉法の中にも最低基準違反の場合は出せることになって、社会福祉事業法の中でもそういう規定はありますけれども、やはりそれはまあ一般的な監査をした後に是正されない場合とか、そういうときにされるということでずっとやってきましたので。
監査というのは、それは経理監査のこと。
- 経理だけじゃないです。一般的なその、一般というか、処遇も含めた法人の運営であるとか、施設の運営管理、全般についての監査です。
それじゃ、そこの表を見てください。平成八年一〇月四日、児童家庭課の訪問指導とありますが、これは平野課長補佐と次長が行きましたか。
- 平野さんは行きました。次長というのはだれのことか。
あなたは行きましたか。
- 私は行きません。
行ってない。
- はい、中央児相の次長かなという感じはしますけど、ちょっと覚えてないです。
平成八年の一〇月に、また中一の子供が園長に殴られて鼻血を出したということは聞いてませんか。
- それはちょっと聞いてないです。
平成八年一〇月一一日の一番右端の欄を見てもらうと、児童の不安定な状況が収束したとありますね。
- はい。
平成八年の一〇月の時点ですね。
- ええ。
児童の状況は収束・限局化の方向と書いてありますけれども、そういう認識だったんですか。
- まあ特に乱れてたというのは、夏休みの終わりごろとそれと九月にかけてでしたので、そういう意味ではだんだん落ち着きというか、まあある特定の子供に囲まってきたということはありました。
次のページ、平成九年の三月になって、三月の末に、恩寵園の職員は二名を残して全員退職しましたね。
- ええ。
それは知ってる。
- 二名かな、ちょっとまあ人数はともかく、大部分が退職したことは事実です。
退職した理由は何ですか。
- 理由は、個別の自己都合ということであります。
たくさんいる職員が全部自己都合。
- はい。
自己都合で辞めたの。
- (うなずく)
園長の指導体制が全然改善されていないということが問題あったんじゃないですか。
- 退職の理由としてはそういうことは。
退職の理由には直接は書いてないけれども、あなたの認識をお伺いしているんですが、あなたの認識としては、職員が辞めたのは、園長の指導体制が全然改善してないということで辞めたという認識はなかったですか。
- ああ、それはないです。
ないですか。
- はい。改善されていないとかって、そういうことではない。改善していましたので。
改善してれば辞めないように思うんですけれども、違いますか。
- ええ、もう辞職願い出したのは、一二月とか一月ごろ散発的に来ましたので、その三月のときに一斉に辞職願いが出て辞めたというわけではありません。
原告代理人
園長が直接処遇から手を引いた後、体罰が復活したりしたという認識はあるんですか、ないんですか。
- そういうことはないです。
そういうものがなかったかどうかについて、子供たちから直接きちんと聞いたということはあるんですか。
- はい、あります。その年の八年の夏休み直後に、措置児童相談で措置した児童相談所の職員が個別に小学生以上の子供の保護に関して聞きましたし、また措置再開するということで、九年のやはり措置再開前に小学生以上の子供全員に児童福祉司のほうが面接し、また担当保母、職員、指導員に面接して確認を行って話を聞きました。
具体的な中身について、午後、当時の子供が証言するんですけれども、県のそういう園長の行動の実態についての調査は非常に甘かった、子供たちからの聴き取りも非常に形式的でおざなりであったというふうにちょっとこちらは考えますけれども、意見みたいで申し訳ないんですが、その点について、本当に完全な十全な調査をしたというふうにお考えですか。
- そういうふうにやはり客観的に調査というのは行ってなくちゃいけないというふうに思いましたので、各その児童福祉士が恣意的に強弱付けても困りますので、調査表を作成して、それに基づいて、園の生活の状況とか、不満であるとか、学校生活、それから何か言いたいことがあるかというような形で項目を決めてやりました。
県に上がっている書面の上ではそうだろうと私も思いますけれども、こういう子供たちが園の中にいる状態を続けながらかつそういうことを県の関係者から直接聞かれて答えるというのは、非常に難しいことだというふうには思いませんでしたか。もっといろんな違う形の、違う専門家とか、外部の者とか、そういう人の援助を受けながらでないとそういう完全な調査というのはなかなかできないというふうには思いませんでしたか。ちょっとその結論だけでいいです。
- 調査を行う前に、やはり子供と信頼関係の下に話をしないと、本音というか、そういうのは出てこないと思うんで、やはり児童家庭課の職員が行うとかというのではなくて、その子供が入所措置したときからかかわっている児童福祉司なり、常日ごろ相談を受けている心理判定の人とか、そういう人が行うべきではないかと私は思っておりました。
そういう県の職員は、子供から信頼を得ていたと、そういうふうに思っていたということですか。
- 児童相談所の職員ということですね。ええ、もちろん。
まあいろんなたくさんのことを全部はご存じでないようなんだけれども、ご存じの範囲で、先程幾つか挙げていただいたことだけでも、そういう体罰について、これは普通の家庭の親がやったらいわゆる児童虐待にあたるというふうには考えましたか、考えませんでしたか。
- 虐待というのとはちょっと違うと思いますけれども。
親がやったら、今、そういう対応はされない。親がやったらですよ。
- ですから、虐待ということであれば対応しなくちゃいけないですけれども。
虐待だと思わない。
- いや、虐待とは違うと思います。
それから、そういう、先程言ったような範囲でもいいですが、県立の施設長がやったとしたら、これは懲戒免職にあたる事実だと、そういうふうには思いませんでしたか、思いましたか、どうですか。
- そういうことについては、私の権限外ですし、仮定の問題ですから。
仮定なので答えられない。
- ええ。
施設長というのは、これは公立でも私立でもそうですが、児童福祉法で親権の代行の権限もある、そういう立場ですよね。
- はい。
そういう施設長に要求される資格、適格、能力という点から見て、一体県は、この恩寵園の施設長に対してどういう評価をしていたんですか。
- ・・・・・・。
園長としてふさわしくないという評価はしなかったんですか。
- まあ管理能力に面で不適切な面があることはそのとおりだと思います。
管理能力というのは、職員に対する管理能力ですね。
- はい。
子供に対する処遇としてはどうですか。
- 恩寵園の場合は、定員が七〇名というような大きな施設でして、三、四十人ぐらいの施設もございますので、そういう意味で子供の指導という面で考えると、信頼関係があった上で子供を指導しないと、やっぱりそれが本当のところになっていかないんじゃないかということから考えると、まあ大規模な施設と小規模な施設のその園長、施設長のあり方というのは異なるのではないかなというふうに思います。
端的におっしゃってください。子供に対する処遇の力はないけれども、大規模だから許されるということですか。
- そういうことじゃなくて、直接処遇は職員が基本的に行うべきであって、園長は、そういう直接処遇にかかわるべきではないうことです。
普通の施設で、どんな大規模の施設であろうとも、法人の理事長なら別ですよ。園長が子供の直接処遇にかかわってないところなんてありますか。
- ですから、第一義的には直接処遇にかかわるべきではないということであって、方針決めたり、そういうことは、当然施設長ですから、親権者ですから、かかわっていくべきだと思いますけれども。
かかわるべきでないというのは、一般論としてもそうおっしゃっているんですか、今。
- (うなずく)
それは県の公式見解ですか。施設長は子供の直接処遇にかかわるべきでないというのは。
- 施設の状況とか定員とか、その状況によって異なるんじゃないかということを言ってるんで、一般論としてべきじゃない、べきだというのは、ちょっとケース・パイ・ケースで違うと思います。
恩寵園の園長はかかわるべきではなかった。
- はい。
それは能力の問題ですね。
- 能力じゃなくて、態勢としてかかわっていくべきではない施設であるというふうに思いました。
被告代理人
あなたの認識として、この園で園長が体罰をやっていた原因はどういうふうにお考えですか。
- 子供の問題行動があって、その懲戒の方法として指導を行う、それを身体的な苦痛を与えるとかそういう方法でやっていたということだと思います。
それは現象としてそうなんですけれどもね、何らかの原因があるからそういうことになったわけなんでしょう。
- はい。
その原因についてはどうお考えですか。先程大規模であるとか小規模であるとおっしゃっていましたけれども、そのあたりもうちょっと正確に言っていただけますか。
- 子供が問題行動を起こしたときにどういうふうに指導していくかというのは重要な問題なわけですから、そういう中で子供と信頼関係が構築された中で行わなければ指導の効果はあがらないということだと思います。それで、大規模な施設であれば個々の子供と園長はかかわるというのは非常に薄められてしまいますので、やはりそういうことであれば職員が行い、また職員同士の連携の中で指導は行われるべきではないかというふうに思います。
そういう場合ですと園長の役割というのは、処遇に対する園長の役割というのはどういうことになるわけですか。
- 直接処遇ということではなくてですね、職員に指示を与えるという立場になると思います。
この園ではそういうかたちではなかったわけなんですか。
- 初めというか、平成七年の指導前までは、保母さんが問題行動があってなかなか指導してもうまくいかないときはすぐに園長のところに訴えにいって指導してもらうというようなやり方をしていました。
直接処遇している保母さんの手に負えないというようなことがあると、園長の直接処遇を求めていたということなんですか。
- はい。
本来はどうすべきだったんですか。
- 職員の連携の中で行われるべきだと思います。あるいは中間管理者がいて、そういう人と相談した中で行われるべきではなかったかと思います。
その当時は保母さん同士の横の連携とかそういうことがあまり確保されていなかったということなんですか。
- そうだと思います。
そうすると、保母さんと園長の中間にいて相互の医師の疎通をはかる体制にもなっていなかったわけなんですか。
- それはなかったです。
それに対して、あなたとしてはどういう方向で指導していけば現に起こっている体罰がなくなると、再発しないですむと考えられましたか。
- 園長が体罰してはいけないというのは強く指導するというのは当然のことですが、そのほかに態勢の問題として職員の指導力を高めたり、それから連携が持たれるような態勢を整えていくということが重要じゃないかというふうに思いました。
職員に対するケースカンファレンスとかありますけど、それはそういう観点からなされたということですか。
- そういうことです。
四月三日から五日にかけて児童が児童相談所に駆け込んだ件についてお聞きしますけれども、先程のあなたの証言ですと、保母と園長の意見の対立だといでしたね。
- はい。
部屋割りについてかなり二月ごろから意見が合わないでいたということですけれども、もうちょっとそのあたりのことを詳しく話していただけますか。
- 特に男子の子供についてどういうふうな部屋割りというか組合せがいいかという中で、初めは縦割りというか、かなり上の高校生から小学生まで同じ部屋にするような方向で部屋割りが組まれていたんですけれども、勉強時間の問題とかそれから職員の集約化の問題とかそういう中で、横割りの小学生の部屋とか中学生の高学年のいってみれば受験勉強しているような子供の部屋とかそういうような分け方にしたいということで話合いがなされていて、一応それについては保母さんと話合いがなされてそういう組合せにしようということは合意ができていたということです。
その合意ができていたけど、具体的に意見が合わなかったのはどの点なんですか。
- それぞれの担当が、だれがやるかということについてです。
低年齢の子供の担当をだれがやるか、高年齢の子供の担当をだれがやるかという具体的な担当について意見が合わなかったということですか。
- そういうことです。
具体的には、たとえば低年齢の子供に対するほうがやりやすいとか、高年齢は大変だからあまりやりたくない、そういう問題なんですか。
- 一般的に言えば、低年齢の子供よりも高学年の子供のほうが生活指導にしろ勉強の指導にしろ大変ですので、経験者があたったりとか、力がある人があたったりするのが通常のやり方かと思います。
それは主として高年齢の子供の担当にさせられそうな人から不満が出たということなんですか、この件については。
- ええ、そういうことです。
そういう問題があって、先程のお話ですと、保母さんが子供さんに交通費を渡して児童相談所に訴えてもらいたいということで出させたということでしたかね。
- そうです。
それで間違いないですか。
- 間違いありません。
それで、たとえば四月三日に来た子供は四日には帰りたがったけど、県のはうで保母さんに子供を連れにくるように指示したけど、保母さんは拒否したということですが、これはどういうことなんですか。
- 迎えに行くのは各施設のほうの担当になるわけですので、言ってみれば保母さんが迎えにいくようにということで園長のはうから指示があったわけなんですけれども、保母さんは迎えにいきたくないということであったわけです。
最終的には四月九日には全員迎えにいくということで合意したわけでしょう、保母さんと園長の間でね。
- はい。
それについてはどういうことでそういう合意になったんですか。
- さっきも話がちょっと出ていましたけれども、子供に謝るとか、それから直接処遇は園長はしないとか、その他幾つかあったと思いますが、大体そういうような話合いの中で、それと保母さんの辞表は撤回するという話になりまして、保母さんたちはそのままずっといられることになったし、部屋割りの担当についても前のとおりに戻すということで、変えないというかたちで合意が得られました。
そうすると、部屋割りについては前の縦割りにまた戻したんですか。
- ええ、そういうことです。
証人は八年の八月三〇日に恩寵園に行ったということでしたね。
- ええ。
どういうことから行かれたんですか。
- 保母さんたちが、子供たちが非常に乱れていて手に負えない状況だし、意見を聞いてほしいということでしたので、夕方出掛けていきました。
子供が乱れているというのはどういうことですか。
- 個々のケーズについてはちょっと言うことはできませんが、夏休みになって少しお小遣いが帰省したりしたので手に入ったとか、それから全体的に生活の乱れということで夜間子供たちが無断外出とか、その他ちょっと法に触れるような行為もあったりなんかして、なかなか保母さんが指導しきれないという状況のことです。
そういう場合、前ですと園長でしたけれども、それはだめだということで、代わりに県のはうに指導というか助力を仰いだということですか。
- はい。保母さんからも聞きましたし「子供の方からも保母さんたちが暴力に押えて指導しようとしているので何とかしてほしいというふうなことを言ってきた子供もいました。
こういう民間の施設の園長を解職させることができるかどうかについてですけれども、あなたの考えとしては法律上できないというふうに考えておられるわけですか。
- そうです。
そういうことはその段階で検討はされたんですか。
- 検討はしました。ちょうど六月議会、定例の議会がありまして、本会議の質問も出ることが予定されていましたので、そこらへんをよく検討しました。
その結果が、検討して直接解職を命ずることはできないと、そういう結論に達したということですね。
- ええ。
措置費について聞きますけれども、措置費というのはどういう意味で出すのか簡単に言っていただけますか。
- 子供を児童福祉施設に措置した場合に、その入所に要する費用とか、かかった費用について最低基準を維持するために出す費用ということで、委託料として支払われるものです。
児童を措置したというのは、要するにそういう施設に入所させたという意味ですね。
- はい。
入所させた以上は必要な経費は県で措置費として出すと、そういうことですね。
- はい。
その措置費の算出方法というのはどういうようなかたちでやるんですか。
- 国が交付基準ということで決めておりますので、その算出の方法に従って定員であるとか子供の数によって額を決め、それに従って払うということになります。
たとえば措置費を支出する園の職員の具体的な給与が幾らとか、あるいは園長の給与が幾らということで措置費の額は変わるんですか。
- 単価ということで、国のほうは国家公務員の給与額を参考にしてモデルというような部分で単価を決めていますので、個々の法人のほうで決めた額とは関係がなく、法人のほうは自分のところの理事会で通った支給規定に基づいて支払っているということになります。
仮に園長がいない場合は措置費はどうなるんですか。
- 園長がいなくても措置費の額は変わらないです。
園長がいなくても園長に出す相当の措置費は出ることになるわけですか。
- ええ、出ますし、いないということについて指導はしなくちゃいけないというのは別問題としてありますけれども、額自体は変わらないということです。
いないということは予想していないということを前提で計算されると。
- はい。
今回、恩寵園につきまして、県が園長を解職しないので、園長分として本来であれば出すべきものは措置費として出しちゃいけないんだというような主張になっているわけですけれども、これはどういうふうに考えればいいんですか。
- そういうことはありえないと。さっき言ったように、極論すれば、園長がいてもいなくても出さなくちゃいけないものですから、解職すべきということについても権限があるかどうかという問題はあるとしても、いなくても出さなくちゃいけないということは額は変わらないので、その主張はありえないんじゃないかなというふうに思います。
原告代理人
今の最後の措置費の点ですけれども、園長がいなくても措置費は変わらないとおっしゃいましたね。
- はい。
いないすべての場合通じてそうですか。
- はい、そうです。
何箇月もいない場合でもですか。
- さっきも言ったように不適切ということはありうるし、いるように指導するということはありえますけれども、その問題と措置費を払うということについては別問題ですので、子供を措置していればその単価で支払われます。したがって額の変更はありえません。
措置費については厚生省の通知、通達は全部御存じですね。
- 知っています。
園が改善の勧告とか指示に従わない、あるいは法令つまり法や省令に従わないようなときに、措置費のうち事務費の一部を払わないということはありえますね。
できるという規定はあります。
- それから、たとえば子供を全然措置しないということになれば、これはもう措置費は一切出ないということにもなりますね。
- いいえ、事務費については定員払いですので、その年度は子供がいなくても定員分は支払います、事務費についてですね。
一部は支払われると。
- 一部というか事務費については全額支払われます。
事業費のことだけおっしゃっているんでしょうけれども、事業費以外に事務費の一部も払わないということがあるでしょう。
- そういうことはないです。ですから前段の質問と後段の質問で分けて言いますと、前段のほうは事務費の一部を支払わないことができるということだったと思うんですね。確かに厚生省の通知の中で民間の給与等改善費のの相当分について支払わないことができるという規定はありますが。民間給与等改善費のことをちょっと。
いいです。書面で出してください。
- その額というのは加算として支払われるものですが、その通知の中でもあるように、監査などで指摘し改善が図られないような場合ですね。そういう場合で不当な支出だとか定数が満たされないような場合があった場合というふうな制裁措置として、その民間施設の改善費を支払わないことができるという規定ですので、この場合は、少なくとも監査で指摘し改善のための努力はしているということですので、それにはあたらないというように思います。
今のは法令でなくて通達なんですけれども、それは分かっていますか。
- はい。
通達があるからできるとかないとかということではなくて、法令にあるかないかどうかで決まるんではないんですか。
- 法令というと、通達のお話をされたので通達に基づく話をしたんですが、法令にそういう規定があるということですか。
いやいや、法律や政令や省令などでできるとかできないとか決まっているんじゃなくて、通達にそう書いてあるということでしょう、今のお話は。
- はい。
あとは法律論ですけれども、そもそもできないものが通達だけで制限できたりするということはないのではないかということですよ。
- ただ、法律に基づいてそういう話になりますと、やはりその前段のいろいろな手続とか法人のほうに対して非常に不利益な処分を行うことになるわけでもあるので、恩寵園の話は抜きにして、それ相応の手続は行われるべきじゃないでしょうかね。簡単に今現に法令違反だから、じゃあ措置費の一部を支払わないようにしましょうという話にはならないと私は思います。
私も簡単にとは申し上げていないです。それから解職のことですけれども、さっき法律的に解職はさせられないと、そういう結論に達したとおっしゃいましたね。
- はい。
社会福祉事業法の解職勧告はするべきかどうかについては、どういう検討をしたんですか。
- 社会福祉事業法の解職は法人の役員についてですので、園長のことではありません。
児童福祉法の改善命令、改善勧告の中に、施設長の解職というものを含められないかどうかということについてはどういう検討をしたんですか。
- 児童福祉法の中で最低基準に違反している場合に勧告とか命令の話かと思いますが。
そうです。
- 最低基準の、四四条に施設の生活指導のことがございまして、そのことをおっしゃっているわけですけれども、それについては生活指導のあるベき姿、たとえば自主性を重んじろとか、社会性だとかそういうものを養うように指導というものはあるべきだという条文が最低基準にあるわけで、それに違反しているからということでおっしゃられたと思いますが、その最低基準の決め方自体が非常に抽象的だということで、そういうことに基づいて勧告命令ができるかという問題があるのと、それから仮にできたとしても、その生活指導というものは適正にやるようにしなさいという命令勧告はできたとしても、それのいわば一つの方法ですので、園長が辞めるかどうかというのは。法人の一つの人事権、法人の自発的な活動という面からすると、そういうことを命令したり勧告したりするということはできないんじゃないかと。
園長の行為がこの最低基準の今おっしゃった四四条に違反しているということは一度お目にかかったときにおっしゃいましたね。
- 四四条ですか、園長の行為について。
この当時、まだいわゆる体罰禁止、権限濫用禁止の基準改正が行われる前だけれども、当時のこの四四条に違反しますねということはお認めになりましたね。
- はい。
原告代理人
あなたの御証言の中で、四月に子供たちが逃走したことと園長の体罰とは関係がないとおっしゃったことは間違いないですね。
- はい。
被告代理人のほうからの質問に対して、四月一〇日に子供を戻すことになったことの経緯は、子供に謝ることと、園長が直接処遇はしないということの中で決まったというふうにおっしゃった。
- それだけじゃないですけれども。
そういうこともあったということですね。
- はい、例として。
なぜ園長の体罰とは関係がないにも関わらず、戻すのに園長が直接処遇をしないということまで踏み込んで話をしなければいけなかったんでか。
- 保母さんたちがそのことを問題にしれからです。
保母さんが問題にしたから、子供とは関係ないけれども直接処遇をしないということにしたということですか。
- もともと処遇の態勢の問題については前年度から指導というか対策はいろいろ指導していましたので、そういう中で、確認事項としてそういうのはあっても不思議ではないと思います。
保母さんのはうで園長が体罰をしでいるのが問題だというふうに言ったということですね。
- ええ、そうです。そういうことですね。
甲第三号証の一を示す
この朝日新聞の記事の中で、保護している子供たちを一〇日にも園に戻す方針を児童相談所は決めたけれども、相談所の職員の中から子供たちを納得させられる説明ができないと反対する声も出ているというような記載があるんですけれども、こういったことはあったんですか。
- それは知らないです。
御存じない。
- はい。
あなたは児相の職員の意見は聞いていらっしゃらないわけ。
- いいえ、もちろん児童相談所の意見を聞くときは所長ないし次長とかそういうところを窓口にして聞きますので、個々の職員がどういう意見かということについては私は分からないです。
じゃあ上がってこなかったということですね。
- はい。
裁判長
今日の証言の中で、四月三日の時点で各児童相談所から連絡を受けたときに、子供たちが保母さんから父通費をもらって、訴えてくれというふうに言われて出てきたという趣旨のことを聞いたというお話がありましたね。
- はい。
四月三日以降、県の職員の方が園長あるいは職員に会って事情聴取をしたということですけど、その点については、そういう事情聴取の段階で確認はされましたか。
- 特に聞いてないです。
どうして聞かなかったんですか。
- どうしてというか、お金をもらったかもらわないかということよりも、子供がどういう環境で育てられるというか、指導できるかということを問題にしているわけですので、お金をもらったかもらわないかというのを確認する必要性というのは。
ただ、どういう職員が指導しているかというときに、交通費を渡して園の外で一定の行為をしなさいなんていう指導というのは、子供にとっての適切な行動ではないと思いますね。
- ええ、思います。
なぜ聞かなかったんですか。
- そういう必要性がないということだと思うんですが、なぜと言われても。
園長の直接処遇の点ですけれども、原則としては子供と日常接する職員が子供に何らかの問題行動があれば、それに対応した措置をとる、行動をとるというのが基本ですね。
- はい。
その職員なり園長なりの事情聴取、あるいはその後四月三日以降、子供たちから各児童相談所において事情聴取をした時点で、職員が対応できないような児童の問題行動があったという話について報告等は受けていますか。
- いろんな時点の問題があると思いますが、そういう行動もあります。
現在記憶していることの中で、職員が対応できない児童の問題行動として何か記憶されておられることはございますか。
- それは八年以降のことでよろしいんでしょうか。
はい。その事情を聞かれたことです。時点は問いません。
- それぞれ、たとえば前年度までの話で言えば、たとえば火遊びしたときの指導の方法であるとか、刃物を振り回して遊んでいるような場合の指導の方法とか、タバコとかいろいろそういう問題行動があったときに、なかなか保母さんだけで対応はできないという部分があったことは聞きました。
今のと関連した質問ですけれども、児童家庭課としては、各施設でその職員が対応できないような児童の問題行動があったときに、どう対応をしなさいというような指導をされておられますか。
- 基本的にはそれぞれの園で対応するようにという指導なんですが、ただちょうど子供たちが非常に一般的に乱れてきたということですね。高学年の子供について特に処遇困難児を各施設とも抱えているような状態になってきたものですから、全般的な話として、もう少し児童相談所との連携の中で指導していったほうがいいんじゃないかということで、
そういう高学年の処遇困難児についての対応ということで、児童福祉施設の協議会という集まりがあるんですけれども、その場で話し合わせたり、それからプロジェクトチームみたいなのを作って、それでどういうような指導がいいのかということを話し合わせたり、また児童相談所としてもそういう子供があったときに、速やかに相談を受けられるような要綱の作成とかそういうことをしました。
原告代理人
この養護施設というのは教護院だとか少年院なんかと違って、そもそも非行を前提とした子供が来る施設じゃないですよね。
- はい。
処遇困難児というものを作りだしたのは、この恩寵園の園長を頂点とする体罰も寄与していたというふうには考えてないんですか。
- ちょっと一般論的に言えばですね、やはり思春期の子供についてはですね。
それは難しい問題があるでしょう。
- ええ。
だけど、とても難しい子が生まれるとしたら、この園にも責任があるということは言えませんか。
- この園にも責任はあると思いますが、それだけではないと思いますし。
それだけではない問題はあるにしても、この園にも責任の一端があるということは今おっしゃったようにお認めになるでしょう。
- ええ、それはあると思います。
被告代理人
処遇困難児がいる施設というのは恩寵園だけではないですか。
- ええ、ほかの施設もあります。というのは、やはり教護院、今名前が変わっていますが教護院に入れるということになりますと、家裁からの措置があればともかく、やはり児童相談所のほうの措置というかたちでやるとなると、親の承諾であるとか子供の納得というのを前提にして行いますので、そういうことが了解いただけない場合は家庭環境を変えてみるとか、そういう中で児童養覆施設のほうに措置して環境を変えた中で指導していくという方法もとられています。したがってほかの施設もおります。
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