トップ アイコン     損害賠償請求訴訟の訴状
2000年3月10日
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from 2000/3/10


 

訴   状

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別紙被告目録記載のとおり

損害賠償請求事件

訴訟物の価格
金一一、〇〇〇万円
貼用印紙額
金四四七、六〇〇円
(訴訟救助の申立を行うので、印紙は貼付しない)

請求の趣旨

一、
被告らは、各原告らに対し、連帯して金一〇〇〇万円及びこれに対する平成八年四月末日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二、
訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決ならびに第一項につき仮執行宣言を求める。
 

請求の原因



第一 当事者
一、
原告らは、社会福祉法人恩寵園の設置する養護施設である恩寵園に元在園していた者である。
二、
被告大浜浩は、遅くとも原告らが恩寵園に措置された昭和五八年から平成一二年三月まで、右恩寵園の施設長の職にあった者である。
三、
被告社会福祉法人恩寵園は、養護施設恩寵園の設置者であり、被告大浜浩を同施設の施設長として雇用していた使用者である。
四、
被告千葉県は、社会福祉事業法に基づき社会福祉法人恩寵園を、児童福祉法に基づき養護施設恩寵園を指導監督する権限を有していた者である。

第二、被告大浜浩の不法行為(民法第七〇九条)
一、
被告大浜浩は、恩寵園に措置された子どもたちに対し長年にわたり常軌を逸した体罰及び身体的精神的虐待行為をくり返す不法行為を行ってきた。
二、
被告大浜浩による体罰及び身体的精神的虐待行為とは、次のようなものであった。
  1. 子どもの態度が悪いと、ライターを点火したまま子どもの腕に近づけて恐怖を与え、職員が制止しても笑いながら続け、さらにその子が足の引っ掻き傷を押えていたティッシュに火をつけた。
  2. 性器を触っていた男児に「そんなことをするオチンチンならばいらない」と、ズボンを脱がせ、性器にハサミを当て、恐怖のために男児を失神させた。
  3. いたずらをした子どもに、「そんなことをする手はいらない」とハサミを動かしながら脅し、実際に子どもの手を切って出血させた。
  4. 小学生の男児が、園で飼っていた鶏を遊具の高いところへ持って上がった際、鶏が暴れて落ちて死んでしまったところ、鶏が可哀想だから鶏の死骸を抱えて寝ろと命じ、実際この男児は新聞紙に包んだ死骸を抱いて寝させられた。
  5. 子どもの服の着方が悪いと、服の袖などを刃物で切った。
  6. 子どもの顔面を殴りつけ、大量の鼻血を出させた。
  7. ポルノ雑誌を持っていた子どもの手足を椅子に縛りつけ、雑誌を開いている格好をさせてポラロイドカメラで写し、笑いながらその写真を担当保母に見せた。
  8. 朝鮮人の子どもが入所し、園では朝鮮人であることを隠して日本名で生活していたにもかかわらず、「お前は朝鮮だ」となじり、その子が泣くと「朝鮮人の泣き方だ」と揶揄した。
  9. 罰として子どもの頭髪の一部のみをバリカンで刈って見せしめにした。
  10. 罰として子どもに二四時間眠らせないで正座をさせたばかりか、食事もさせずトイレにも行かせず、子どもがトイレに行きたくて我慢できないと言うと、平然とズボンのまましろと命じ、ついにその子どもはズボンのまま、しかも他の子どもの目の前で排尿せざるを得なかった。
  11. 幼児を乾燥機に入れたり、明かりのついていない小さな部屋に閉じ込めて外からたたく等して怖がらせた。
  12. 熱い風呂にのぼせるくらいまで無理矢理浸からせた。
  13. 罰として頭髪の一部を残してバリカンで刈った。
  14. 高校生の女子を下着だけの姿で部屋の中に立たせた。
  15. プロミスリングを足につけていた子どもを見つけた際、他の子どもたちを集め、その子どもを机の上に寝かせ、包丁を当て、足を切断するまねをして足を切り出血させた。
  16. 罰として子どもを麻袋に入れ、吊した。
  17. 規則に違反した服を着ていた子どもの服をはさみで切った。
(以上一七項目の体罰については、千葉地方裁判所平成九年(行ウ)第七一号損害賠償請求事件につき平成一二年一月二七日に言い渡された判決(確定)が既に認定ずみ)
三、
各原告に対する被告大浜浩の不法行為
別紙各原告に関する請求原因記載のとおり

第三、被告社会福祉法人恩寵園の使用者責任(民法第七一五条)
 被告社会福祉法人恩寵園は、その事業である養護施設恩寵園の運営のため、被告大浜浩を使用し、被使用者たる被告大浜浩がその事業の執行につき原告らに対し第二項記載の不法行為を行ったものであるから、被告大浜浩と連帯して原告らに対し民法第七一五条第一項に基づく損害賠償責任を負う。

第四、被告千葉県の損害賠償責任(国家賠償法第一条)
一、千葉県知事をはじめとする児童福祉行政に携わる県公務員の不法行為と被告千葉県の賠償責任
 被告千葉県の公権力の行使に当たる公務員たる千葉県知事沼田武及び社会部児童家庭課、児童相談所職員等は、児童福祉法第四六条・第五八条ならびに社会福祉事業法第五四条等に基づき、養護施設恩寵園ならびに被告社会福祉法人恩寵園に対する強い監督の責任と権限を有し、本来その権限を行使して被告大浜浩の原告らに対する体罰及び身体的精神的虐待行為を防止・阻止すべく公権力を行使すべきであったにかかわらず、原告らの在園中これを怠り、ことに平成八年四月五日前後の時点においては、社会福祉法人恩寵園に対し、園長たる被告大浜浩の解職を含む児童福祉法第四六条三項に基づく改善勧告をなすべき作為義務があったのに、過失によりこれを怠り、もって原告らに後記損害を発生せしめた。よって、被告千葉県には、国家賠償法第一条に基づき、原告らの損害を賠償する義務がある。
二、千葉県知事をはじめとする被告千葉県の公務員の過失の内容
  1. 被告千葉県と社会福祉法人及び養護施設との関係
    (一)
     養護施設恩寵園は、社会福祉法人恩寵園が設置している施設であり、被告大浜浩の実父が設立した後、被告大浜浩が長く法人の理事長と施設の施設長を兼務してきたものである(ただし、平成八年度中に理事長のみは辞任した)。
    (二)
    社会福祉法人恩寵園は、社会福祉事業法第三〇条、第二八条の二に基づく千葉県知事の認可を得て昭和二七年五月三〇日に設立された法人であり、被告千葉県は、同法第五四条に基づき、同法人に対し、業務停止命令・役員の解職勧告・解散命令を含む強い監督権限を有する者である。
    (三)
    養護施設恩寵園は、社会福祉法人恩寵園が社会福祉事業法第五七条に基づいて設置した施設であり、被告千葉県の首長である千葉県知事は、同施設が同法第六〇条の最低基準に適合しない場合に同法第六六条に基づく改善命令、その運営が著しく適正を欠く場合には同法第五四条に基づく改善命令・業務の全部または一部の停止・役員の解職・解散命令までなし得る強い監督権限を有している。
     また、養護施設恩寵園は、児童福祉法第七条の児童福祉施設のひとつであって、同法第四一条に基づき、乳児を除いて、保護者のない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護することを目的とする施設である。同施設の設置は同法第三五条に基づき千葉県知事の認可を得てなされ、同施設への児童の入所の措置は、同法第二七条に基づき千葉県によってなされ、その入所に要する費用及び入所後の養育に要する費用は同法第五〇条に基づき被告千葉県が支弁し、被告千葉県は同法第四六条に基づく改善勧告・改善命令・事業の停止等の強い監督権限を有するとともに、最終的には同法第五八条に基づき認可を取り消す権限をも有する者である。

  2. 平成七年以前の千葉県の公務員の不法行為
     養護施設恩寵園は、昭和二三年に被告大浜浩の実父が園長として事業を開始した園であるが、同人は全国及び千葉県の施設長の間でも管理主義・体罰容認で有名だった人物であり、被告大浜浩はその方針を受け継いで二代目の園長となった者で、同被告の管理主義・体罰容認もまた他の施設長、千葉県の児童相談所職員、児童家庭課の職員等に周知の事実だった。ことに児童相談所職員は、直接個々の児童の入所措置・措置後の訪問等を通じて園に出入りするため職員や入所児童と接する機会も多く、被告大浜浩の常軌を逸した体罰・虐待の事実を当然感知し得る立場にあった。また、児童家庭課職員は、年一回の監査において同園に立ち入って監査していたのであるから、その機会に被告大浜浩の体罰・虐待の事実を感知し得たはずであった。
     さらに、恩寵園の職員・実習生等関係者の中には、被告大浜浩の体罰・虐待を見かねて児童相談所に報告した者もあった。
     以上の事実は、後記被告千葉県の公務員たる児童相談所長の協議会が平成七年一〇月一二日付報告書中に「同園では、過去にも入所児童に対する体罰が取りざたされた経緯があり」と明記していることからも明らかである。
     要するに、被告千葉県の公務員が、右「取りざたされた」時点で、迅速に調査し厳しく監督権限を行使していれば、原告らの被害は防げたか少なくとも縮小することができたはずなのである。

  3. 被告大浜浩の体罰・虐待に関する被告千葉県の認知
     平成七年八月二三日、市川児童相談所に、「(恩寵園園長に)殴られた。手に持っていたティッシュに火をつけられた。刃物で脅された。」等、被告大浜浩の体罰を訴える匿名の電話があった。被告大浜浩については、過去にも体罰が問題となった経緯があったため、被告千葉県の児童相談所長協議会が調査し、その結果を平成七年一〇月一二日付報告書として被告千葉県に報告した。
     同報告書は、「調査の結果、対象児童の多くが園長から殴られた経験があると話し、・・職員からも体罰に関する話があり」、「園内で入所児童に対する体罰が行われていたと判断する」と認定するとともに、その根底に被告大浜浩の管理主義的教育観とそれを実現する手段としての体罰肯定思想があることを指摘し、これを被告大浜浩の『信念』であると報告している。
     これを受けて被告千葉県は、一方で恩寵園への児童の新規入所措置を停止するとともに、恩寵園に対する口頭指導(具体的には、児童相談所職員等による訪問指導)を開始した。

  4. 被告千葉県の口頭指導の不奏功
    (一)
    ところが、被告大浜浩の管理主義的教育観と体罰肯定思想は同人の『信念』であったため、右口頭指導はせいぜい前記のような刃物沙汰や血を見る体罰などを控えさせたのみで、到底真の反省を導くには至らず、口頭指導は功を奏さなかったばかりか、かえってこれを陰湿化させた。そのことは、次のような事実からも明らかである。
    1. 被告千葉県の児童福祉施設協議会のマラソン大会に園の子どもたちが参加する際のことであるが、被告大浜浩は、ひとりの男児の顔に友達とふざけあってできた薄く小さなアザがあるのを見つけ、「県や児童相談所の職員にアザを見られたら、何を言われるか分からない」と、その男児を参加させないと言いだし、職員が参加させるように頼むと、その男児を参加させないか、園全体の参加を取り止めるかどちらかだと、まったく無茶な選択を迫った。
    2. 被告大浜浩は、約六か月もの指導を受けた後の平成八年四月二日、子どもが屋上に登ったと怒り、その子どもが使ったはしごを外し、雨の降る寒い日であったにもかかわらず、二時間もの間、子どもが屋上から降りられないようにしたまま屋上で正座させるという非情極まる行為に及んでいる。
    (二) 子どもたちの集団逃走事件と告発
     平成八年四月一日、ついに思いあまった恩寵園の子どもたち一三名は、互いに相談の上、被告大浜浩の体罰・虐待の実情を児童相談所に直訴しようと、四月三日から五日にかけて園を逃げ出して県内四か所の児童相談所に駆け込み、一時保護された。
     子どもたちは口々に、それまで被告大浜浩からいかに酷い虐待を受けてきたかを訴え、「園長が辞めない限り、絶対に園には帰らない」と必死に抗議した。さらに子どもたちは、四月一二日、千葉県弁護士会と千葉地方法務局人権擁護委員会に対しても被告大浜浩の虐待を訴え、人権救済申立をした。この事態は大きく新聞報道され、広く県民の関心と同情を呼ぶに至った。
    (三)被告千葉県による被告大浜浩の擁護と子どもの人権軽視
     右の事態に対し、被告千葉県の児童家庭課長成田美代は、「職員の一部が園長と対立して『辞める』と言ったのを耳にし、子供がパニックに陥っただけで、根の深いものとは思っていない」(平成八年四月一〇日付朝日新聞)との認識に立ち、また園内に入って直接事態の収拾に当たった中央児童相談所長前田茂則も同様の認識にたって、子どもの意思も無視してすぐさま園に戻そうとしたばかりか、実際に中央児童相談所に救いを求めて駆け込んできた子どもたち数人を「お前たちもいけないんじゃないの?」と言って園に追い返し、園内の子どもたちに対しても、同趣旨の発言をして子どもたちの内部告発を封じようとした。
    (四)逃走した子どもたちの帰園と知事への手紙
    学校の春休みに一時保護された子どもたちは、新学期が始まってもなお園に戻ろうとしなかったのであるが、学校の欠席日数も気になり出し、園長に辞めてほしいという願いも実現しないまま、四月末にはやむなく園に戻らざるを得なかった。
     県に対する手前、子どもたちに謝罪すると約束した被告大浜浩であったが、その実、謝罪と称して言った言葉は、「自分も良くなかったかもしれないが、体罰を振るわなければならないような原因を作ったのは子どもたちなのだから、子どもたちも今後原因を作らないように」というものであった。子どもたちは、子どもの側に責任を転嫁する被告大浜浩に対しますます反発するとともに、一向に被告大浜浩を辞めさせようとしないどころか、子どもが問題を起こせば体罰もやむを得ないと言わんばかりの県職員の態度に対しても不信を募らせた。
     五月一日、九名の子どもたちは、被告千葉県の首長たる知事沼田武に宛てて「園長は変わっていない」「助けて」「園長は辞めるべきです」などと訴える手紙を出した。これに対して知事沼田武は、五月二〇日付で、「あなたが・・・不安な気持ちを強く持ち、何とかしてほしいことがよくわかりました。・・すごしやすい園になるよう努力したいと思います。」などと、一般的挨拶にとどまり、子どもたちが求めた肝心な虐待への救済については一言も触れない同一文面の返事を書き、これをあろうことか、被告大浜浩に直ちに知られる方法、すなわち園宛に郵送する方法で子どもたちに届けた。
     その上、右子どもたちの悲鳴にも近い切迫した救済の求めに対しても、それまでの口頭指導、それも被告大浜浩に対する指導というよりは、園長と職員の対立を改善させるという観点に立っての職員への指導を継続したほかには、何ら抜本的な対策を講じなかった。
    (五)被告大浜浩の体罰・虐待の継続
     平成八年五月以降同年八月頃までは、被告大浜浩が直接処遇を行わなくなったこともあって従前のような身体的虐待は見られなくなったものの、他方で、被告千葉県が新たに体罰等を手段としない処遇体制を確立する指導もしなかったことから、園児たちが次第に荒れていき、無断外泊や喫煙等の問題行動を起こすようになって、同年九月頃から被告大浜浩の直接処遇が復活し、再び同人が左記のような身体的精神的虐待を行うようになった。
    1. 平成八年一〇月一三日、園児が職員と話をしているうちに、「こんな所にいたくない」と言って手で壁をたたいたところ、それを見た被告大浜浩が、その園児の顔を拳で殴って鼻血を出させた。
    2. 平成九年四月以降、被告大浜浩は、原告MKに対し、
      a 幼児の部屋で幼児の面倒を見ていた際、部屋に入ってきて、同人のお尻をけとばした。
      b 恩寵園の電話を使用したことについて頭を叩いた。
      c 同人の友人らが恩寵園に来た際、その友人らに対し帰るように言い、同人が友人らを送ろうとした際、外へ出たら高校を辞めさせると言った。

      などの不法行為を行った。
    (六)被告千葉県による新規入所措置の再開
     (四)記載のような被告大浜浩による体罰・身体的精神的虐待が続いていたにもかかわらず、被告千葉県は、平成九年一〇月一三日、体罰はなくなった、園は改善されたと称して恩寵園に対する新規入所措置を再開した。
     しかも、その後に措置した児童の多くは、体罰・虐待を受けても外部にこれを告発する能力のない、小学校低学年・幼児などの低年齢児童だったのである。

  5. 被告千葉県が児童福祉法第四六条に基づく改善勧告をしなかった違法性
    前記のとおり、被告が平成七年一〇月から口頭指導を行っていたにもかかわらず、4の(一)1、2の事態、ならびに4の(二)の児童の集団逃走事件が発生したこと、被告大浜浩の体罰等の態様、右体罰が偶発的に生じたものではなく、同人の管理主義的教育観とそれを実現する手段としての体罰肯定思想に基づくものと考えられること等を合わせ考慮すれば、被告千葉県の口頭指導が功を奏さなかったことは明白であり(むしろ体罰を行っていた被告大浜浩を厳しく指導するのではなく職員を指導していた点でそもそも口頭指導の方向性が間違っていた)、4の(二)の児童の集団逃走事件が発生した平成八年四月五日前後の時点で、被告千葉県には、被告社会福祉法人恩寵園に対し、体罰等の再発を抜本的に防止することを目的とする、園長の解職を含めた指導体制の改善を勧告すべき作為義務が生じたものである。
     また右勧告すべき状態は、(四)1,2に記載した体罰・虐待の継続があった以上平成九年四月以降も継続していたと認められるから、被告が右勧告をしなかったことは違法である(千葉地方裁判所平成一二年一月二七日判決)。

  6. その後も続いた被告大浜浩の体罰・虐待
     平成一一年一二月二四日、市民から千葉県警察本部に対し、被告大浜浩ほか氏名不詳の職員を被告発人として、同人らの園児に対する傷害罪・暴行罪を告発する告発状が提出された。これに対し、千葉県警は、平成一二年二月一六日、十数人の捜査員が園に入って実況検分・事情聴取し、同日被告大浜浩を傷害容疑で、被告大浜浩の息子の元職員を女子園児に対する強制わいせつ容疑で、近く書類送検する方針と発表した。

  7. 住民訴訟判決による右違法性の認定
     平成一二年一月二七日、千葉地方裁判所は、千葉県民二名が原告となって提起した住民訴訟(平成九年(行ワ)第七一号損害賠償請求事件)の判決を言い渡し、同判旨において、被告千葉県が平成八年四月五日前後の時点で、被告社会福祉法人恩寵園に対し、園長の解職を含む改善勧告をしなかったことは違法であると認定した。

  8. 判決・警察による家宅捜索の後にようやく為された被告千葉県の改善勧告
     被告千葉県は、右判決で勧告しないことの違法性が認定され、市民の告発に基づいて為された警察の捜査により恩寵園の家宅捜索・実況検分等がなされ、被告大浜浩他の傷害罪・強制わいせつ罪等での書類送検がほぼ確実となった平成一二年二月一六日、ようやく被告社会福祉法人恩寵園に対し改善勧告をなした。
      ところが、同月二八日、同法人が改善ではなく休園を県に申し出たのに対し、被告千葉県は同日直ちに休園もやむなしとの見解を法人に示した。これに対して厚生省は、三月一日、「園を休園する措置は、子供を守るという児童福祉法の基本理念に沿ったものと言えない」と被告千葉県を厳しく批判し、被告千葉県が被告社会福祉法人恩寵園に休園を再検討させ改善計画書を出させるよう同県を厳しく指導監督した。
     三月八日、被告大浜浩の次男晶(元恩寵園指導員)が強制わいせつ容疑で逮捕された。

第五、原告らの損害
一、
 原告らは、被告大浜浩の日常的かつ長期間にわたる常軌を逸した体罰・虐待という故意による不法行為によって、楽しかるべき子ども時代を奪われ、あたかも収容所のような生活を強いられ、生命身体の自由と人格権を著しく侵害された。
 その上原告らは、子ども期に受けた被告大浜浩の虐待により今も心的外傷(トラウマ)を抱えて苦しみ、また高校進学の機会も奪われて十分な受け入れ環境もないままに社会に放り出された結果、社会的経済的に多大な苦難を強いられ、将来もこれを背負って生きなければならない。このような原告らの損害を慰謝するに足る慰謝料は、原告一人あたり金一千万円は下らない。
二、
右原告らの損害につき、被告社会福祉法人恩寵園は民法第七一五条に基づき、被告千葉県は国家賠償法第一条に基づき、被告大浜浩と連帯して賠償すべき義務を負う。

第六、結 語
 以上の次第であるから、請求の趣旨記載の判決を求めるため、本訴に及んだ次第である。
 ただし、被告社会福祉法人恩寵園については、同法人が休園の方針を撤回し、千葉県の勧告の趣旨に沿った改善、すなわち過去の問題点と責任の所在を明らかにし、理事全員を子どもの人権を尊重する新たな理事に刷新するとともに、子どもの人権保障に精通した学識経験者等で構成される第三者機関を設け、今後の改善に関する具体的方針を打ち出した場合には、その内容を確認のうえ和解する意思がある。なぜならば、原告らは卒園生として、現在園に生活している兄弟のような子どもたちが休園によってばらばらにされることを容認できないし、園の存続と子どもたちの処遇の改善を強く望むものだからである。

証拠方法
一、甲第一号証 千葉地裁平成一二年一月二七日判決 一通
二、甲第二号証 平成一二年二月一六日付勧告書 一通
三、甲第三号証 「恩寵園入所児童(小学五年以上)・保母との面接調査結果要約(報告)」 一通
四、甲第四号証 一九九六年四月一〇日から五月二日までの新聞記事 一通の一乃至一七
五、甲第五号証 「子どもの人権救済申立書」 一通
六、甲第六号証 「知事への手紙」 一通の一乃至九
七、甲第七号証 知事から子どもたちへの回答書 一通
八、甲第八号証 恩寵園子供自治会作成の知事宛要請書 一通

添付書類
一、甲第一号証乃至八号証の写 各一通
二、法人登記簿謄本 一通
三、訴訟委任状 一一通

二〇〇〇年 三月 一〇日
 
原告訴訟代理人弁護士

千葉地方裁判所 民事部 御 中

代理人目録 (略)

原告目録 (略)

被告目録
被告 大浜浩

被告 社会福祉法人恩寵園
  右代表者理事長 最首和雄

被告 千葉県
 右代表者知事 沼田武